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初任給「引き上げ一服」か 全学歴引き上げ企業は75.6%に低下

労務行政研究所(東京都品川区)は、2026年度新卒入社者の初任給調査を実施した。その結果、2026年度の初任給を前年度から「全学歴引き上げた」企業は75.6%となり、前年度の83.2%から7.6ポイント低下したことが分かった。
 一方、「全学歴据え置き」企業の割合は21.5%と、前年度の14.2%から7.3ポイント上昇。
 産業別に見ると、製造業は87.5%の企業が全学歴を引き上げたのに対し、非製造業は65.1%と製造業より22.4ポイント低かった。
 初任給を「全学歴引き上げた」企業の割合の推移を見ると、2020年度までは30%前後で推移した後、2021年度はコロナ禍による業績不振の影響などを受けて17.1%と大幅に低下。しかし、2022年度以降は上昇基調となり、ここ数年は70~80%の高水準で推移している。
 学歴別の初任給を見ると、大学卒26万5708円、大学院卒修士28万2645円、短大卒23万1975円、高校卒21万7981円となった。
 前年度と比較した上昇率は、大学卒5.3%、大学院修士卒4.7%、短大卒5.1%、高校卒6.3%だった。
 調査は、東証プライム上場企業のうち1543社に調査票を発送し、回答のあった205社を集計。3月下旬に調査票を発送、あわせて電話による取材も行い、4月9日までに回答のあった分を集計した。
(ITmedia ビジネスオンライン 5月4日)

労務行政研究所が公表した2026年度初任給調査は、一見したところ賃上げ継続の証左のように映る。しかし数字を冷静に読み解けば、そこには地殻変動の予兆が刻まれている。
全学歴を引き上げた企業の割合は75.6%。前年度の83.2%から7.6ポイント後退し、「全学歴据え置き」が14.2%から21.5%へと跳ね上がった。この逆転の兆しを、たんなる揺り戻しと片付けることはできない。22年度以降に構築されてきた賃上げの連鎖が、その勢いを明らかに殺ぎ始めているのである。
産業別の断層はさらに顕著だ。製造業87.5%に対し、非製造業は65.1%——22.4ポイントもの開きがある。デジタルサービス、流通、外食などを抱える非製造業の多くが、円安コストと消費の頭打ちに喘いでいることをこの数字は示している。日本経済の二極化は、新卒の入口にまで及んでいると見なければならない。
金額に目を転じると、大学卒26万5708円、高校卒21万7981円という数字は、上昇率こそ5〜6%台を記録しているが、生計費の高騰速度に追いつけているかどうかは別問題である。東京都の25年度最低賃金が時給1163円(月換算で約20万円超)であることを踏まえれば、高校卒の初任給との距離感に改めて問い直しを迫られる。
初任給を全学歴で引き上げた企業の割合がコロナ禍の21年度に17.1%まで急落した後、企業は「賃上げしなければ採れない」という市場の現実に押され、水準を回復させてきた。だがその論理は、業績圧力の前では脆くも崩れうる。今回の7.6ポイント低下を「一時的調整」と楽観する根拠は、現時点では乏しい。むしろ、賃上げの持続可能性そのものが問われる局面に、日本企業は静かに踏み込みつつあるのではないか。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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