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MUFGが65歳に定年延長、55歳で給与下げる制度も廃止…若手は大幅な賃上げ

三菱UFJフィナンシャル・グループが25日、傘下の銀行や信託銀行、証券会社で2027年度から、定年を60歳から65歳に延長すると発表した。若手には大幅な賃上げを実施し、年齢を問わず優秀な人材の確保を図る。
 定年延長の対象になるのは、三菱UFJ銀行、三菱UFJ信託銀行、三菱UFJモルガン・スタンレー証券。経験豊富なシニア人材が活躍できる基盤の整備が目的で、銀行では55歳を機に給与を下げる制度も廃止する。銀行に残って活躍を続ければ昇給が可能となり、50歳代で出向していた人材が、銀行に残るケースも増えそうだ。
 並行して若手の処遇改善も進める。銀行と信託は、26年度から大卒の初任給を30万円に増額する。若手を中心とした非管理職の賃金も銀行が最大7%程度、信託が最大8%程度引き上げる。若手も能力に応じて登用する方針だ。
 福利厚生制度も拡充する。26年度から出産直後などに取得する育児休業の有給期間を2週間から4週間へ延ばす。また、育休の取得者が所属する部署の同僚に対し、「御礼金」として最大10万円を支給する。
(読売新聞オンライン 3月25日)

三菱UFJフィナンシャル・グループが示した一連の人事制度改革は、老いと若さ、経験と可能性が複雑に絡み合う現代の企業社会への、ひとつの問いかけのように思う。定年を65歳へと延ばし、55歳以降の給与を切り下げる慣行を廃するという決断は、長い時間を組織に捧げてきた社員の知見を、もうしばらく手元に留めておきたいという切実な願いの表れであろう。
しかし、その裏側には、変化の速度に苦闘する巨大組織の逡巡も透けて見える。新陳代謝を抑え込むことは、やがて組織の呼吸そのものを鈍らせる危険を孕む。
若手の初任給を引き上げ、非管理職の賃金を底上げする施策は、外の世界に飛び立とうとする若い才能を引き留めるための、いわば最後の糸のようなものだ。しかし、彼らが求めているのは、金銭的報酬もさることながら、むしろみずからの力を試し、未来を形づくるための場であるはずだ。制度を整えるだけでは、彼らの心を捉えることは難しい。
育休取得者の同僚に「御礼金」を支給するという発想は、人間の温もりを感じさせる一方で、負荷の偏りが常態化している現実を告白しているようでもある。制度の美しさだけでは、働く者たちの疲労を癒すことはできない。
結局のところ、今回の改革は、変わりゆく時代に対する守りの模索にすぎないのかもしれない。真に問われているのは、制度の刷新ではなく、組織の精神そのもの――働く者が自分の時間と力を託したいと思える場所へと変わり得るかどうか、その一点に尽きる。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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