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中小賃上げ、道険しく 価格転嫁進まず、厳しい経営体力

2026年春闘が本格的にスタートした。労使とも物価上昇を上回る賃上げを目指すことでは一致する。好業績の大手企業は高水準の賃上げ継続に前のめりだが、経営体力の厳しい中小企業は「賃上げ疲れ」が指摘される。長引くインフレによるコスト負担が重くのしかかり、価格転嫁の遅れで、大手との格差是正の道は険しい。
 「取引先には企業努力で何とかしてと言われる。しわ寄せは全部、下の方に来ている」。神奈川県内の中小自動車部品メーカーの経営者は肩を落とす。コロナ禍以降、売上高が低迷する中、高まる人件費を製品価格に上乗せすることができず、赤字に陥っている。  
中小企業庁が昨年11月に公表した調査結果によると、労務費や材料費のコスト上昇分のうち販売価格に転嫁できた割合は、発注企業からの1次請け企業が54.7%、2次は52.5%と5割を超えたが、4次以上になると42.1%と、転嫁率は多重下請けほど悪化する。
別の中小企業関係者は「業界全体が変わらないと、十分な価格転嫁はできない」と独力での値上げ交渉の限界を指摘する。
(時事通信 2月1日)

連合は、今年はベースアップ実施の検討を「賃金交渉のスタンダード」と位置付け、約7割の働き手を雇用する中小企業における賃金引き上げの持続可能性を高めることが不可欠と表明した。そのうえで、賃金引き上げ原資の確保に向けて、生産性の向上やサプライチェーン全体での取り組み、政府や地方自治体による支援に加えて「賃金は上がっていくもの」と「適正な価格転嫁と販売価格アップの受入れ」の2つの考え方を社会的規範として浸透させていく方針だ。
 焦点は価格転嫁である。中小企業庁は「中小企業・小規模事業者の価格交渉ハンドブック」で、交渉のステップを次のように説明している。①自社業種・業界の価格改定に関する情報収集(自社の所属する業界団体などを通じ、 業界動向を把握②取引先(発注者)業界・業種の情報収集 と価格交渉順の検討(発注側企業の事業形態や業種、規模などの動向と、 自社との取引実績をふまえ交渉順を検討)③取引先(発注者)への交渉の申し入れ(必要に応じて書面での申し入れを行なう)④価格交渉に向けた説明資料の準備(原材料費や労務費のデータは定期収集/自社の付加価値を活かした代替案提示が取引継続のポイント)⑤発注後に発生する価格交渉(アウトプットイメージの共有が困難な短期業務ほど プロセス管理を重視し、随時顧客に進行確認)。
 当然、このとおりに交渉しても価格転嫁を実現できるとは限らない。行政の介入が必要ではないのか。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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