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「静かな退職」「解雇」そして「崩壊」――まん延する“静かなトレンド”の正体

退職はしないものの、必要最小限の業務のみをこなす「静かな退職」(Quiet quitting)という言葉が2020年代初頭に登場して以来、「静かな○○」という働き方のトレンドは収束するどころか複雑化している。TechTargetジャパンは、2025年に掲載した記事の中で「静かな解雇」(Quiet firing)と「静かな崩壊」(Quiet cracking)という現象を紹介した。  「静かな○○」に共通するのは、表面上の対立を伴わず、会社や上司と従業員の結び付きが弱まっていく点だ。これらの「静かな」トレンドは、生産性の低下にとどまらず、従業員の燃え尽き症候群や退職を引き起こすため、経営リスクとして顕在化しつつある。本稿では、それぞれの現象について解説する。
 静かな退職は、従業員が実際に退職届を出すわけではないが、仕事への熱意を失った状態だ。必要最小限の作業をこなし、仕事とプライベートの境界線を引きワークライフバランスを保つ。静かな退職を選んだ従業員は以下のような行動を取る。
・会議に出席しなくなる ・始業時間直前に出社したり、終業時間直後に退社したりする
・業務の生産性が低下する
・上司や同僚と協力する必要のある業務に貢献しなくなる
・業務への情熱や意気込みが感じられなくなる  
背景にあるのは、新型コロナウイルス感染症のパンデミック以降に加速した「仕事よりもプライベートやメンタルヘルスを優先する」という価値観の転換だ。(TechTargetジャパン 12月28日)

静かな退職で現われる行動は指示待ち型の行動である。その行動は昔から珍しくなかった。指示待ち世代とか指示待ち人間という言葉が流行ったのは、1981年4月の新卒社員の人物像を形容するネーミングが契機だった。じつに45年も前から、自主性の欠落が指摘されてきたのである。
あの時代、自主性の発揮が重要であることぐらいは誰もが理解していたが、出る杭は打たれるという懸念から発揮を控えて、指示を待っている人が多かった。あくまで上意下達がルールで、なまじ自主性を発揮しようとすると、上司や先輩に「10年早い」と退けられる場面も珍しくなく、指示待ちは処世の術でもあった。提案は「提案せよ」という指示を受けての行為だった。
 この記事は、静かな退職の背景は新型コロナウイルス感染症のパンデミック以降に加速した「仕事よりもプライベートやメンタルヘルスを優先する」という価値観の転換と指摘している。多くの職場が指示待ちを求めなくなって久しいが、価値観の転換によって、ふたたび指示待ち型が増えているという。
 静かな退職によって職場との距離を広がるようになれば、おのずと退職代行の利用増にもつながってゆくだろう。弁護士法人mamori(東京都渋谷区)が全国の20〜30代男女550人を対象に調査したところ、およそ6割が退職代行を「必要・合理的な選択肢」と肯定的にとらえていることがわかった。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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