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後継難事業「外様」が救う 第三者へ承継支援2.6倍

 後継者難の中小事業者で親族や従業員でない「第三者」の事業承継が広がる。国が設置した公的相談窓口「事業承継・引継ぎ支援センター」の第三者承継の成約は6年間で伸び率が2.6倍になった。センターと連携する自治体なども地域に根差した事業者の廃業を防ごうと取り組む。
国は2011年度から支援センターを順次開設、17年度に現在と同じ全国48カ所(東京は2カ所)になった。マッ.チングなどを後押しした第三者承継支援の成約は23年度に2000件を突破、24年度は2132件と過去最多だ。
(中略)
 兵庫県の支援センターの統括責任者、津吉一弥氏は「商工団体や地域金融機関による相談の機会の創出が寄与する」と指摘する。
 例え豊岡市。センターは商工会との相談会をきっかけに後継者難の旅館の支援を開始した。事業の担い手をインターネットで募集する同市の「継業バンク」などを活用し、兵庫県内の水産加工業者とのマッチングが実現した。センターはこの業者に譲り受け後の事業展開などを助言した。
 継業バンクは市が但馬信用金庫などと連携した第三者承継の独自の支援策だ。2021年10月の開始以来、4件の成約があり、市の環境経済課の中田智美氏は「地域の経営資源の消失を防げると期待する」と話す。
(日本経済新聞 12月6日)

 政府が指向する経済成長の足かせになりかねないのが、経営者の高齢化問題である。中小企業庁が2025年6月に発表した資料によると、14年から24年にかけて、すべての都道府県で70代以上の経営者割合 は増加した。とくに地方圏で増加幅は大きい。海外と比較すると、日本は、米国、ドイツ、韓国よりも50代以下の割合が低く、60代以上の割合が高い。
  親族に後継者候補が不在で、企業の存続をめざすのなら、第三者承継を選ぶ以外になく、地域で事業承継のエコシステムが構築されることが期待される。
 事業承継は地域経済の先行きにも大きく影響するが、自治体と地域金融機関の後押しが不可欠だ。平塚信用金庫、神奈川産業振興センター、平塚市、平塚商工会議所、神奈川県信用保証協会の5者は、2026年1月21日、平塚市内の中小企業事業者・個人事業主で事業承継を検討している経営者、後継者、後継候補者を対象に共催セミナーを開く。
 セミナーでは、事業承継のポイントを講義するほか、事業承継をした事業者がパネルディスカッション形式で体験談を語る。
 付言すれば、事業承継の成否はどんな経営者に後事を託すかにかかっている。中小企業庁の見解では、事業承継後に企業を成長させている経営者は①創業者や先代経営者のワンマン経営や既存事業に依存しがちな企業風土に対し、 事業の棚卸を行ない、従業員への役割の明確化、モチベーションを維持に向けた取組を実施している②自身の経営資源の価値を再定義し、既存事業にとらわれない企業革新や新しい取組を実施している一方で、創業者や先代経営者が培ってきた企業文化を重視している。
この2点を満たしているという。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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