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リコー会長・山下氏が語る「人を活かす経営」

2020年、リコー会長の山下良則氏は「OAメーカーからデジタルサービスの会社への変革」を宣言。「人を活かす経営」に取り組み、組織風土をはじめとする数多くの改革を進めてきた。2024年12月に著書『すべての”はたらく”に歓びを! リコー会長が辿り着いた「人を愛する経営」』(日経BP)を出版した山下氏に、人を活かすための環境づくりや組織風土改革の舞台裏について話を聞いた。
――実際に「組織風土が変わってきた」と実感したのは、どのようなタイミングでしょうか。
山下 社長に就任した2017年からの3年間は、「とにかく現場の空気をオープンにする」「モチベーションの高い人材がチャレンジできる風土をつくる」ということに集中し、副業制度やアクセラレーションプログラムなど、さまざまな取り組みを始めた時期でした。
(中略)
 リコーではコロナ禍で変えた働き方を「元には戻さない」と宣言しています。2020年8月には、ニューノーマル(新常態)への対応として、リモートワークを標準化するガイドライン「My Normal」を発行しました。同年10月からは、リモートで自律的に業務が実施できる場合は、対象社員や日数の制限なくリモートワークができるように人事制度そのものを変更しています。
 2021年には、さらに一歩進めて「Our Normal」と題して働き方に関するガイドラインをアップデートしています。これにより、業種・業務ごとの違いを踏まえて働き方を選択可能とすることで、誰も孤独を感じたり、組織から取り残されたりすることがなく、働きがいを実感できる環境をつくっています。

(Japan Innovation Review 10月31日)

 高市早苗首相が労働時間の上限緩和に動き出している。その行方はともかく、かりに緩和策が実現すれば、これを奇貨として働き方改革を逆戻りさせる企業も少なからず登場するだろうが、原則としていままで通りに取り組めばよい。
そもそも健全な企業は政権の政策転換に幻惑されず、自社の見識に従うものである。
 リコーの取り組みは、厚生労働省「働き方・休み方改善ポータルサイト」にも紹介されている。それによると、リコーは2021年度に「創ろう!My Normal」のスローガンにチームワークを加味して「創ろう!Our Normal」に変更して、リモートワークと対面のハイブリッドな働き方を模索するトライアルを実施した。
 22年度は、21年度に実施したトライアルの継続について部署ごとに検討し、必要に応じて実施。遠隔地居住のルールを制度化し、ワーケーション実施ガイドを作成した。23年度はハイブリッドワークレベルアップのためのトライアルを実施した。
 こうした取り組みの結果、働き方変革のプロジェクトが発足する以前の16年度と比較すると、23年度の所定外労働時間は約10%削減した。さらに年次有給休暇取得率は21年度に72.1%だったが、23年年度に81.5%に向上した。
 労働時間の規制が緩和されても、おそらく労働時間が元に戻ることはないのではないだろうか。
 さらにリコーの取り組みで着目したいのは単身赴任の解消策だ。20年10月からは「どこでも勤務」により、旅行先や帰省先での一時的な業務(ワーケーション)の実現や、単身赴任を解消できるように就労環境を整えている。単身赴任は生活コストの上昇を招くが、物価高騰の時代に単身赴任を回避できることは、社員には助かるだろう。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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