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「心理的安全性の促進は“ヌルい職場”を目指すものではない」

2020年に人事制度を刷新、翌2021年からビジョン実現の土台となる風土醸成を目的に「心理的安全性の高い職場づくり」を推進しているサッポロビール。
 取り組み開始から現在に至るまでのプロセス、実際の施策にも触れながら、人財戦略の現在地と今後の構想を、同社人事総務部/組織開発プランニング・ディレクターの竹内利英氏が語った
サッポロビールは、2020年に人事制度の大きな改革をしており、最も大きな改革テーマは、それまで「評価制度」と呼んでいた制度を「育成評価制度」に改め、社員の成長・育成に主眼を置いた制度へ移行したことでした。
 管理職の仕事に、「メンバーの育成」という要素はもともと含まれていたものの、それまでは、どうしても個々の目標や業績にとらわれ、育成は後回しになりがちでした。そこで改めて、社員一人一人を育成し、成果を上げるチームをつくっていこうという方針を掲げました。
 育成についての最初の取り組みは、上司とメンバーが定期的に行う1on1について、その質の向上を支援することでした。
(中略)
2021年からは「心理的安全性の推進」に着手しました。育成評価制度に改めた際に、個人の業績だけでなく、チームのパフォーマンスにも主眼を置くと掲げていたので、チーム力を発揮するために必要な施策として始めました。
(Japan Innovation Review 10月14日)

サッポログループは、中期経営計画の基本方針「Beyond150 ~事業構造を転換し新たな成長へ~」に据えた「人財戦略」の重点施策に「スピードある成長に向けた積極投資」「経営人財育成」「多様性の促進」「社内外人財の流動的な活用」「エンゲージメント向上と健康促進」を挙げている。
このうちエンゲージメント向上と健康促進のポイントには「魅力ある会社へ更なる変革(業績・報酬・制度)」「多様な価値観に対する柔軟な働き方」「健康経営の推進」に並んで「アンコンシャスバイアス・心理的安全性の正しい理解と浸透」が示されている。成果指標は、ワークエンゲージメント(業務へのポジティブな心理状態) が54以上(2024年54.0)、プレゼンティーイズム損失(体調不良で生産性が低下して生ずる損失)が 33.4%以下(24年 33.9%)。
サッポロビールが取り組む心理的安全性の高い職場づくりは、心理的安全性を構築するサービスを提供するZENTech(東京都千代田区)が主催する「心理的安全性AWARD2022」でSILVER RINGを受賞した。サッポロビールのプレゼンテーション題名は人事部キャリア形成支援グループによる『心理的安全性を共通言語に!〜企業も社員も成長するしなやかで強いチームづくりを目指して〜』。
 授賞の選考基準は①チーム/組織の心理的安全性を向上させていること②心理的柔軟なリーダーシップを発揮しているか③組織や社会への波及効果である。心理的安全性はいわばメンタル保持のセーフティーネットで、イノベーションとの相関関係も認められている。
 上場企業の社長にも心理的安全性を付与すれば、ベンチャー企業の社長のようにリスクに挑むようになるだろうが、株主が付与してくれるだろか。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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