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介護人材確保に奔走 SOMPO系、年収を全業種平均並みに

人材不足が深刻化する国内の介護業界で各社が担い手確保に力を入れている。SOMPOケア(東京・品川)は賃上げを急ぎ、ALSOK介護(さいたま市)は外国人採用を大幅に増やす。人手不足を背景に事業者の倒産も過去最高を記録している。担い手が減少する中、サービス維持へ各社が知恵を絞る。
SOMPOケアは業務の見直しを進め、捻出した資金を賃上げなど社員の処遇改善に充てる。介護を含む医療・福祉業の平均年収は403万円(23年時点)と、全産業平均の459万円よりも低い。SOMPOケアは30年度までに自社職員の平均年収を全業種平均まで引き上げる。人手不足対策としてインドで介護人材の育成も進める。
ALSOK介護は25年度、インドネシアやインドからの外国人材25人を採用する。特定技能制度で入国し、5年以内に介護福祉士を取得できるよう支援する。同社の外国人材は24年度時点で29人にとどまっており、大幅増になる。首都圏の有料老人ホームなどで業務にあたってもらう想定だ。
 26年4月には50人の採用を予定し、その後も年50人程度を目安に採用する。新卒社員のようにまとめて採用して研修を受けもらい、育成コストを抑える。
(日本経済新聞 9月30日)

 介護業界は一部の大手事業者を除けば、大半が中小事業者である。賃金水準や定着率は法人規模によって格差が大きく、厚生労働省は中小事業者の経営支援策として、複数の事業者が採用や物品購入などを共同で実施できる社会福祉連携推進法人制度を運用している。 
この制度の発足には大規模化・共同化の推進という意図が込められ、中小事業者のままでは経営が行き詰るという構図に至りつつある。この流れに拍車をかけるのが最低賃金の引き上げである。
政府は最低賃金を2030年代に1500円以上に引き上げる方針を示しているが、この方針には、全業界にわたって大規模化・共同化を進め、中小事業者の淘汰を看過する意図が見え隠れしている。すでに人件費倒産が増えているが、公定価格で経営する介護事業者は、介護報酬改定がインフレに追いつかず、賃上げを余儀なくされつづければ、事業所閉鎖や倒産に追い込まれる事業者が相次ぐだろう。
選挙のたびに立候補者は介護士や保育士の賃上げを公約に掲げるが、高齢化によって膨張をつづける社会保障財源を抑制する流れは、今後も変わらない。
 この記事に掲載されたSOMPOケアもALSOK介護も、いわば勝ち組だから、賃金水準を全業種平均並みに引き上げ、コストのかかる外国人材の採用に踏み切れるのである。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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