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金融の流儀、給食会社でも 信頼築く技、転職先で成果

転職する際に、同じ業種や職種を選択する人は少なくない。積み重ねたスキル、経験を生かしやすいからだ。
では、全く異なる分野に移る場合、それまでに培ったものはどうなるのか――。
外資系金融の社員から、父が経営する学校給食大手に常務として入社した荻久保瑞穂さん(43)も同じ状況に直面した。
(中略)
 社長の娘であっても入社したばかり。「年下で業界経験のない人に指示されても人は動かない」とも分かっていた。
 このとき、全く別ものだと思っていた前職の経験が生きた。メンバーの出身地や文化的な背景が異なる事が多く、話し合いを繰り返して意見をすり合わせ、結論を出す社風だった。やり方は同じと考え、部長級の十数人と何度も話し合って信頼関係を築いた。
 周囲の同意を得て、前の会社にあった「メンター制度」を導入。中堅社員が新人や、育児休暇を終えた社員のサポート役となる仕組みだ。様々な事情で退職しても、元の役職で戻れる「退職者リターン制度」も取り入れた。
 成果は目に見えて表れた。
(日本経済新聞 9月18日)

業種や職種が変わっても持ち運びができる職務遂行上のスキルをポータブルスキルという。このスキルの持ち主はどんな業界でどんな仕事に就いても力を発揮する。
 厚生労働省によると、ポータブルスキルの要素は「仕事のし方(対課題)」と「人との関わり方(対人)」において9要素がある。厚労省が作成したポータブルスキルの診断ツールは、たとえば「仕事のし方」では、仕事における前工程から後工程のどこが得意か、「人との関わり方」ではマネジメントだけでなく、経営層や、上司、お客様など全方向の対人スキルを診断する。
 しかしポータブルスキルの持ち主が力を発揮するまでは、周囲は様子見する風潮があるようだ。これは異業種からの転職者だけでなく、異業種からの参入企業にも当てはまる風潮である。
ムラ意識の現われなのだろうが、多くの業界で、異業種からの参入者に向けて「新参者」とか「ポッと出」という排他的な見方が、いまもなお散見される。業界プロパーは領分が侵され、長年の労苦が軽んじられたように胸中がざわつき、反射的に「この業界、甘くないよ」と放言したくなるようだ。
例えば介護業界では多くの業界プロパーが「福祉経営は一般産業の経営と違う。社会保障制度の熟知が必要なので、未経験者が参入しても難しい」と冷淡な目を向ける。一理なくもないが、この業界に異業種から参入して成功した例は格別珍しくない。
損害保険会社から参入したSOMPOケアや、出版社から参入した学研ココファンは介護業界で主導的な地位を築いている。2000年に介護保険制度が発足するまでは社会福祉法人が介護業界を主導し、2000年以降に異業種から参入してきた事業者を「素人」と揶揄する関係者も少なくなかったが、いまや異業種から参入した勝ち組事業者に一目も二目も置かざるを得なくなった。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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