2025/08/19
企業が経営者に株式で報酬を払う動きが広がっている。主要企業の株式報酬の比率は2024年度に3割を超え、現金で支払う月例給を初めて上回った。欧米型の報酬体系が広がっており、経営者が企業価値を高める動機づけになる。グローバルで人材を獲得しやすくするほか、株価を意識した経営を後押しする効果がある。
外資系コンサル会社WTW(ウイリス・タワーズワトソン)が売上高1兆円以上の日本企業83社を対象に、最高経営責任者(CEO)ら経営トップの報酬を累計した。
株式報酬である「長期インセンティブ」の比率は33%と前の年度より3ポイント上がった。10年度の調査開始以来、いわば月例給の「基本報酬」(2ポイント低下の32%)を始めて上回った。報酬総額(中央値)は7%増の2億9700万円と、4年連続で過去最高を更新した。
背景にあるのは株価を意識した経営の浸透だ。日本企業は欧米に比べて月例給の比率が高く、株価引き上げに対する経営陣の意識付けが弱いと投資家から批判されてきた。23年に東京証券取引所が上場企業に資本コストや株価を意識した経営を要請し、株式報酬比率を上げる企業が増えた。
(日本経済新聞 8月7日)
東京証券取引所のコーポレートガバナンスコードは「経営陣の報酬については、中長期的な会社の業績や潜在的リスクを反映さ せ、健全な企業家精神の発揮に資するようなインセンティブ付けを行うべき」「中長期的な業績と連動する報酬の割合や、現金報酬 と自社株報酬との割合を適切に設定すべき」と述べている。
資本収益性や株価に関する指標を役員報酬に反映させる企業はどのぐらい増えたのだろうか。
TOPIX100構成企業で役員報酬の算定に、ROE(自己資本利益率)、ROIC(投下資本利益率)など資本収益性に関する指標を採用する企業は43%、TSR(株主総利回り)やPBR(株価純資産倍率)など株価に関する指標を採用する企業の割合は36%――今年3月にWTWが発表した。
WTWによると、ROEやROICは長期インセンティブにおけるKPIとして最も多く活用され、次いでTSRを中心とした株価指標が2番目に多く活用されている。それでもTSRのような株価指標の採用割合は、米S&P500や欧州主要インデックス構成企業の6~7割が株価指標を採用している現状に比べると低く、「投資家や規制当局からのプレッシャーもあり、今後、TSR指標を採用する企業が増加する傾向は続くと予想される」という。
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