2025/08/13
今年度の最低賃金(時給)の引き上げ目安が4日、過去最大の63円(6・0%)と決まった。長引く物価高を反映した形で、最低賃金の全国平均は過去最高の1118円と初めて1100円台に突入する見通しとなった。ただ、急激な引き上げは「副作用」も伴う。政府は「2020年代に全国平均1500円」との目標を掲げているが、道筋は不透明だ。
厚生労働省の審議会の協議では、労働者側と経営者側で意見の溝がなかなか埋まらず、事前に公表された4回の日程で結論は出なかった。会合は44年ぶりとなる7回目にもつれ込んだ。
最低賃金は、〈1〉世間一般の賃金水準〈2〉働く人の生計費〈3〉企業側の支払い能力――の3要素を総合的に考慮して決まる。
審議で特に重視されたのが生計費の上昇だ。「最低賃金に近い収入で生活する労働者の生活実態がわかるよう」(厚労省幹部)、平均6・4%上昇(昨年10月~今年6月)した食料品価格など各種物価指標を詳細に分析。こうした作業に時間を割いたことが審議の長期化につながったという。
経営者側の委員を務める全国中小企業団体中央会の佐久間一浩事務局次長は、「各種の指標に対して今まで以上に向き合い、時間をかけながら真摯(しんし)かつ丁寧に議論した」と述べた。
(読売新聞オンライン 8月5日)
最低賃金の全国平均が過去最高の1118円に届くことについて、東京商工会議所は「今回の結果は、公労使で議論を尽くし、法定三要素のうち賃金・物価の大幅な上昇を反映したものだが、地方・小規模事業者を含む企業の支払い能力を踏まえれば、極めて厳しい結果と言わざるを得ない」と声明を出した。
その一方で「近年の大幅な引上げに伴い影響を受ける企業が増えていることを踏まえ、発効日について、準備期間の確保の観点から、地方最低賃金審議会での議論を求める旨が示されたことは評価したい」と付言した。
連合(日本労働組合総連合会)も清水秀行事務局長がコメントを発表した。「過去最高となる6%(全国加重平均)の目安は、賃上げの流れを未組織労働者へと波及させ、社会全体の賃金底上げにつながり得るものとして高く評価する」と述べたうえで、今年度の取り組み方針として①「誰もが時給1000円」の実現②1000円達成後は「一般労働者の賃金中央値の6割水準」の中期目標をめざす③地域間の「額差」縮小などを挙げた。
さらに「『誰もが時給1000円』を達成できる目途が立ったことは評価できる。小委員会報告で、一般労働者の賃金中央値の6割水準などを含むEU指令に言及され、公労使で議論を深めていく足がかりとなる」と評価した。
最低賃金の引き上げが何をもたらすのか。就労者の生計を支える一方で、最低賃金を支払えない事業者は淘汰されてゆく。
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