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エン・ジャパン、社員還元8割の勝算 社長が週5メシで極意伝授

菅田将暉さんのCMが有名な「エン転職」を手掛けるエン・ジャパンが第2の創業に挑む。4月、創業者の越智通勝氏が社長に復帰した。以前のような社員の高いパフォーマンスを取り戻すことが狙いとみられる。同社の社員への還元割合を示す労働分配率は推計8割と大企業平均の5割を上回る。高水準の人材投資の成果を出せるか。
「どんなことでも聞いてください」「何かあれば相談してください」。越智社長は週5日のペースで社員.とのランチ会「おちめし」を開く。社員との対話を通じ、キャリアや仕事への考え方、発想力の醸成につなげる。現場も商品や採用の知識を学ぶための勉強会や演習の機会などを増やすようになったという。
 2000年に創業し22年に代表権のない会長に退いた越智氏が再び経営のカジを取るのは、社員が生む価値の低下など成長の停滞がある。
 市場の評価は低い。新型コロナウイルス禍前の19年末の時価総額は約2400億円と、リクルートホールディングス(7兆円弱)はパーソルホールディングス(約4800億円に次ぎ規模だった。今は800億円強と66%減った。
(日本経済新聞 6月10日)

 次世代に経営を託した創業者が社長に復帰するのは、もはや背に腹は代えられない事態に瀕しているからだ。おもに業績の低迷を抜け出すために、思い切った経営改革に迫られているときに復帰するケースが多い。
思い切った経営改革には社内外に軋轢が生ずるが、その難局を乗り切るにはカリスマ性をともなうリーダーシップが必要で、創業者が指揮を振るうことに行き着く。それまでに通らなかった意見も、創業者が述べれば通るのである。
 エン・ジャパンは創業者の越智通勝氏が社長に復帰する理由について「変化の激しい事業環境において更なる企業価値向上を目指し、新たな体制による改革が必要であると判断した」と述べ、「(越智氏は)強固な経営基盤の構築と次世代経営陣の育成に努めていく」と付言する。
 越智氏は自社ホームページで次のように述べている。
「今あらためて創業者として、当社の理念に立ち戻り、指針を示す必要があると考えている。エン・ジャパンが大切にしてきた理念のひとつが『主観正義性と収益性の両立』である。自社独自の正義『主観正義』と、収益性を兼ね備えた、独自性のある事業運営にこだわりを持つ。商品をより社会に役立つものにし、求職者や企業からの信頼をさらに高めていく。ビジネスを通じて社会の課題を解決し、世界をよりよく変えていく。このスタンスを改めて大切にしたい」
 主観正義について、エン・ジャパンは「まだ社会的に問題とされていないことでも、独自の問題意識をもって解決に取り組み、業界や社会の常識が間違っていると思えば、主張し、変えていくこと」と定義している。この方針を改めて徹底させるには創業者の存在が必須と判断したのだろう。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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