2025/06/11
厚生労働省が30日発表した一般職業紹介状況によると、4月にハローワークに申し込んだ65歳以上の新規求職者は12万3179人だった。前年同月より5.6%増え、記録がある1997年以降で最多となった。物価高が続く一方、年金額の伸びは抑えられている。不足する生活費を補うため働こうとする動きが広がっているとみられる。
4月の有効求人倍率(季節調整値)は1.26倍、総務省が発表した完全失業率(季節調整値)は2・5%でいずれも前月と比べ横ばいだった。
例年4月は65歳以上の求人申し込みが増える傾向がある。年度末に退職した人が再就職に動き出すためとみられる。これまでの最多は24年4月の11万6643人だった。
厚労省は「物価高騰を背景に、生活費を補填するため仕事探しを始める傾向がみられる」と説明する。背景にあるのは年金額の上昇幅を抑える「マクロ経済スライド」だ。年金額は賃金や物価の伸びを考慮して毎年度改定されるのが原則だが、現役世代の負担能力に応じて伸びを抑える。
現在支給されている年金は2024年6月から2・7%引き上げられた。
(日本経済新聞 5月31日)
65歳で再雇用を終えてもなお働きつづける理由はさまざまだが、公的年金だけでは生活できないという経済的理由が多いようだ。今後は経済的理由に、新たに住宅ローン返済が増えるかもしれない。
やや心配なデータがある。住宅金融支援機構の「2022年度 フラット35利用者調査」によると、住宅ローンを組んだ平均年齢は42.8歳という。返済期間は30~35年が一般的だから、完済年齢は30年ローンで72.8歳、35年ローンでは完済時年齢は77.8歳に達する。
実際は退職金を返済に充当して、もっと早く完済するのだろうが、多くの会社員は50歳前後に年収のピークを迎え、以降は定年退職まで下がりつづける。まして黒字リストラが増え、40歳を過ぎれば失業リスクが避けられない時代に入った。再就職先がすぐに見つかるか、再就職先がミスマッチでなく長く働けるか。こればかりはわからない。
返済リスクを考えれば住宅ローンは50歳までに完済しておきたいが、40代で組めばそうはいかない。退職金で完済できなければ、返済のために働きつづけるしかない。この実態を知れば若年層の賃貸志向はますます高まるに違いない。
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