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パナHDが今期中に1万人削減、純利益15%減 米関税影響含めず

パナソニックホールディングスは9日、連結対象会社の従業員を1万人規模で削減すると発表した。グループ各社の業務効率の見直しなど経営改革を断行する。2026年3月期中にも国内・海外それぞれ5000人規模ずつ減らす。
今期業績予想(国際会計基準)に人員削減も含む構造改革費用として1300億円の損失を織り込んだ。今期の連結純利益は前年比15.3%減の3100億円となる見通し。IBESがまとめたアナリスト15人の予測平均値三六〇七億円を下回った。今期の業績予想には米国関税政策の影響を織り込んでいない。
楠見雄規社長は会見で、人員削減の経営責任は「私にある」として自らの今期の総報酬の約40%を返上すると明らかにした。「雇用に手をつけることは忸怩(じくじ)たる思い」としつつ、「労働生産性が必ずしも高くないところにメスをいれなければいけない」と説明。「ここで経営基盤を変えなければ、10年後、20年後にわたり持続的に成長させることはできない」と話した。(ロイター 5月9日)

人材を「人財」と表記することにこだわりを持つ企業がある。「社員は材料ではなく財産である」というのが理由で、確かに理にかなっているが、事業構造の転換にともなう黒字リストラは、やはり社員は人財でなく人材である――その実態が現われている。
パナソニックの場合、グループ経営改革で、2026年度の収益改善効果目標を24年度に対して1500億円以上に設定し、26年度に調整後営業利益6000億円以上をめざしている。この改革の過程で人員の適正化による収益改善を700億円見込み、次のように述べている。
「社員一人あたりの生産性が高い組織へと変革すべく、グループ各社で 営業部門・間接部門を中心に業務効率の徹底的な見直しを行うとともに、必要な組織・人員数を再設計します。また、収益改善が見通せない赤字事業の終息や拠点統廃合も進めます。これらにより、グローバルで人員を適正化します」
 現状は人員が過剰で生産性が低いと示唆している。雇用の維持が困難でなくとも、収益改善の調整弁として希望退職を実施することに、抵抗をもたない企業が増えると、エンゲージメントとは逆の作用が働くだろうが、経営陣もその程度のことはわかり切っている。
社員を人財ではなく人材として、雇用関係を冷徹に割り切る時代になったようだ。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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