2025/05/02
伊藤忠商事が女性を執行役員に優遇して登用する施策を導入して4月で1年がたった。部長などを経験させずに役員に起用する「劇薬」といえる取り組みで、役員に占める女性比率は28%弱に急伸。2030年までの政府目標の30%以上に近づいた。異例の取り組みは生え抜き男性社員に依存してきた日本企業での女性登用の難しさを表す。
4月1日付で取締役と監査役、執行役員ら役員総数は47人から54人に増えた。女性は10人から15人に増え、女性比率は21・3%から27・8%に高まった。人事・総務を統括している小林文彦副社長は「目標ありきではないが、30年までに30%を達成できる」と語った。
同社がアファーマティブアクション(積極的差別是正処置)と呼ばれる女性を対象とした執行役員の選考制度新設を公表したのは24年1月。部門長や部長を経て執行役員に昇格する通常ルートに対し、課長や室長から特進する優遇措置を設け、導入当時に1人だった女性執行役員は24年4月に6人、25年4月には11人と大幅に増やした。
小林氏は「女性総合職の8割は20~30代。執行役員に昇格するまで時間がかかるが、外部人材を採用すれば生え抜きの気をそぐ」という。(日本経済新聞 4月22日)
アファーマティブアクションはポジティブ・アクションともいわれる。内閣府男女共同参画局はポジティブ・アクションを「一義的に定義することは困難ですが、一般的には、社会的・構造的な差別によって不利益を被っている者に対して、一定の範囲で特別の機会を提供することなどにより、実質的な機会均等を実現することを目的として講じる暫定的な措置」と定義している。
同局によると、ポジティブ・アクションの手法は①指導的地位に就く女性等の数値に関する枠などを設定する方式②指導的地位に就く女性等の数値に関して、達成すべき目標と達成までの期間の目安を示してその実現に努力する手法③研修の機会の充実、仕事と生活の調和など女性の参画の拡大を図るための基盤整備を推進する手法――この3つがあるという。
ポジティブ・アクションの具体例を示している厚生労働省は、 勤続年数が長く能力や意欲も高いにもかかわらず、 従来の性差別的な雇用管理により管理職に就いている女性が少ない場合に「女性のみを対象とする又は女性を有利に扱う取組」として「昇進試験の受験を女性に奨励する」「昇進試験の合格者の中から、女性を優先して昇進させる」を挙げている。
長年、男性がゲタをはかせてもらった歴史を修正するために、女性にゲタをはかせる措置ともいえる。伊藤忠商事もこの方法を取っているようだ。
Talk Geniusとは-
ヘッドハンティング会社のジーニアスが提供する人と会社と組織を考えるニュースマガジンです。