2025/04/04
人事異動にまつわる出来事のうち、退職を考えるきっかけになるのは何ですか? リクルートワークス研究所のアンケート調査によると、「望まない勤務地への異動」が、「望まない上司のもとへの異動」「役職の降格」などを抑えて最多になった。強まる「転勤NG」の理由とは。
調査は、望まない職種への異動▽望まない勤務地への異動▽望まない部署への異動▽望まない上司のもとへの異動▽役職の降格――の5項目について、「退職を考える」「どちらかといえば考える」「どちらかといえば考えない」「考えない」の四つの選択肢から自分の考えに近いものを選んでもらった。2024年10月、全国の約1万人を対象に調査し、その中から正規社員だけを抜き出して分析した。
これによると、「望まない勤務地への異動」(転勤)をきっかけに「退職を考える」と答えた人は30・4%に上った。
この他の項目では、「望まない職種への異動」21・3%▽「望まない上司のもとへの異動」21・0%▽「望まない部署への異動」18・9%▽「役職の降格」が15・9%――で続き、いずれも2割前後だった。
(毎日新聞 3月27日)
出世志向が弱まって久しいが、これが転勤を拒む大きな背景だ。優先すべきは家庭の安寧へと重きが移ったのである。
転勤には出世の階段である有力な拠点への異動もあれば、「地方に飛ばされる」「支店に飛ばされる」といわれるように左遷人事もある。前者を望まない社員が増えれば、転勤はもっぱら左遷人事の手段にシフトしてしまう。現に退職させたい社員を依願退職に追い込む手段に転勤が利用されている。
転勤は扶養家族を持っていれば、家族と切り離されるが、それも出世のためにはやむを得ないと受け入れる時代は過ぎ去りつつある。望まない転勤は滅私奉公のひとつだが、この慣行に修正が迫られている。
転勤に家族を帯同すれば子供は転校を強いられ、進学にも支障を来しかねない。私立中学や私立高校への進学が増えてゆく時世にあって、転校は避けたいので、単身を選ぶと二重生活によって生活費が増大する。総務省が2023年に実施した家計調査によると、単身赴任の生活費の平均額は家賃を除いて14万3821円。家賃の全額が会社負担でなければ、さらに生活費は膨らんでゆく。
こうして転勤が拒否されれば、離職防止のためにも転勤のあり方を見直す企業が増えるだろう。
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