2025/03/26
上場企業で社外の人物が務める取締役の長期在任が増えている。在任10年以上の社外取は2024年、主要企業で約700人と5年で19%多くなった。適任の社外人材が不足する。国内外の投資家などで、経営者との距離が近くなりすぎるとの見方が広がる。株主総会で反対票が増える恐れがある。
「在任が長い人は会社への理解が深く、監督機能をより発揮してもらいやすいと投資家に伝えてはいるのだが・・・・・・」。ある上場企業のIR(投資家向け広報)担当者はこぼす。社外取は監督機能の強化策として日本企業に定着した。日本経済新聞が集計したところ、東証株価指数(TOPIX)構成銘柄の企業(延べ人数)で24年は8452人。10年で3・8倍になった。
ところが、その社外取に厳しい目線が向けられている。ファーストリテイリング、任天堂、キッコーマン――。主要企業の株主総会で、在任十数年~約20年の社外取選任への賛成率が60~70%台にとどまった。
背景にあるのが、長期在任で独立性が損なわれるとする投資家の懸念の高まりだ。経営者との距離が近くなり、経営への監視が利きにくくなるリスクを問題視する。
(日本経済新聞 3月16日)
そもそも社外取締役の役割は何か。経済産業省が2024年1月に発表した「社会取締役のことはじめ」には、社外取締役としての5つの心得を示している。①最も重要な役割は、経営の監督 中核は、経営陣の評価と指名・報酬②社内のしがらみにとらわれず、会社の持続的成長に向けた経営戦略を考える③業務執行から独立した立場から、経営陣に対して遠慮せずに発言・行動④経営陣と適度な緊張感・距離感を保ちつつ、信頼関係を築く⑤会社と経営陣・支配株主等との利益相反を監督――在任期間が長期におよぶと、これらの役割をどこまで適正に果たせるのかが疑問視されている。
社外取締役の評価について、役員報酬情報サイト「役員報酬.com」は、業績評価は馴染まないとしたうえで「取締役会出席率」「各種委員会出席率」など定量基準に加えて「取締役会での発言」「ガバナンスへの貢献」「事業方針決定への参画」「専門分野における判断、貢献」「グループ全体の理念、事業への理解」など定性的な評価を挙げている。
これだけの定性評価に耐えられるのは、上場企業の経営経験者ぐらいしかいないのではないだろうか。人材不足といわれるのもやむを得ない。
パソナJOB HUBの公式サイトは社会取締役の要件に「既存の経営陣と親交がある人を避けたうえで、忌憚のない意見を伝えられる」「既存の経営陣が未保有のスキルや経験がある」「自身の経営経験も重視される。経営に対するアドバイスや統制は、机上の空論ではむずかしいことも多い」と示している。
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