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高収益が指摘される中で低賃金・採用難が続く介護業界

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冬の日は短い。埼玉県の池田進さん(56)=仮名=は午後4時すぎ、勤務先の介護施設に向かうため夕暮れの中、自転車をこぎ出した。自宅に戻るのは翌朝10時をまわる。踏み込むペダルは、そう軽くない。
4年前に建築関係の仕事から転職した。家庭の事情で日中は仕事に出られず、勤務は夜勤のみ。月収は18万円ほどで、この4年間ほとんど上がっていない。妻のパート収入と合わせ、なんとか4人の子供を養う。
「介護は総合的な人間力が試される。入所者と心のつながりを感じるとうれしくなる」
仕事にやりがいはある。ただ、夜間は入所者50人に対し、職員は2人。仮眠すらままならない日もある。
「何年たっても給料は上がらない。職員の入れ替わりは激しく、ベテランと呼べる人は増えない」。池田さんはため息をつく。
(中略)
安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」で雇用環境は改善した。しかし、介護業界まで「ヒト」は回ってこない。都内などで介護付き有料老人ホームを運営する会社の担当者(44)は嘆く。
「1人当たり20万円の採用予算を組んだが、足りない。お金をかけても採用が難しいのが現状だ」 (産経新聞 12月6日)

厚生労働省が発表した介護事業者経営実態調査では、社会福祉法人が潤沢な内部留保を蓄えていると公表され、これを理由に、来年4月の介護報酬改定はマイナス改定が有力視されている。

2人の介護事業コンサルタントに調査結果の感想を尋ねたところ、2人とも「多くの社福がそんなに内部留保を蓄えているとは思えない」と調査結果への疑問を口にした。現場感覚からすれば介護はけっして収益性の高いビジネスではないようだが、高収益を上げている介護事業者もあるわけで、この種の議論は真相が見えにくい。

いずれにせよ、問題は給与水準である。いまの水準では、いくら仕事の社会的意義をアピールしたところで、若者の志に届くのは難儀だ。

制度ビジネスゆえの限界はあるが、行政を頼るよりも、世間並みの給与水準を確保している事業者の経営手法と収支内容を研究して、保険外サービスを拡充するなどの取り組みが求められている。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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