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ソニー赤字拡大、初の無配、スマホ不振、今期最終2300億円、1000人追加削減

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ソニーは17日、2015年3月期の連結業績見通しを下方修正するとともに、1958年の上場以来初の無配になると発表した。中国勢などとの競争激化で不振が続くスマートフォン(スマホ)事業の減損(3面きょうのことば)処理で1800億円の損失を計上し、最終赤字は当初見込みの500億円から2300億円に拡大する。エレクトロニクス分野の中核であるスマホの立て直しに向け、さらに1000人規模を削減する方針も明らかにした。
最終赤字はリーマン・ショック直後の09年3月期以降で6回目となる。業績悪化が鮮明になった後も配当は続けてきたが、株主配分より財務改善を優先せざるを得なくなった。記者会見で平井一夫社長は「経営陣として大変重く受け止めている」と陳謝した。
下方修正の最大の理由は、平井社長らがエレキ分野の再建の担い手と位置付けてきたスマホ事業が想定以上に苦戦していることにある。
スマホ市場は世界の出荷台数が4~6月に2割増えて最高になるなど成長が続いている。ソニーも最新の機能とデザイン性が売り物の高級機種「エクスペリア」が人気だが、圧倒的なブランド力を誇る米アップルの「iPhone」、低価格を武器にシェアを伸ばしている中国製品などに押され気味だ。
7月末に、今期の販売台数計画を4300万台(前期比10%増)と従来計画から700万台引き下げた。「普及価格帯のモデルで中国勢との競争が激化している」(平井社長)という。iPhoneの新機種も近く発売される。この日は新たな出荷台数計画は示さなかったものの、一段と下振れする懸念もある。
(日本経済新聞9月18日)

7月に今季の販売計画を引き下げたときから、ソニーの今期の業績が厳しいことは予想されていたが、赤字幅は市場の予想を上回った。このニュースが伝わった直後のニュヨーク市場ではソニーの株価が7%下落した。

ソニーにとって赤字の拡大と無配よりも深刻なのは、今後の成長戦略が見いだせなくなったことだ。中核として位置付けていたスマートフォン市場で戦線縮小を余儀なくされたことで、スマートフォンやカメラ、テレビなどで構成するエレキ事業の成長は厳しくなった。

ソニーは赤字拡大の予想と同時に以下の事業戦略を発表した

  • 展開地域を収益の見込める市場に絞り込む
  • 高付加価値商品への集中
  • 低価格モデルの削減

しかし、これは縮小均衡を目指す当面の施策を述べただけで、中長期的な成長戦略には至っていない。高価格帯にはiPhoneがいる。アップルの世界シェアは11.9%、方やソニーは4.4%に過ぎない。高価格帯に特化するならアップルに勝つ戦略が必要だ。また、低価格帯から撤退すれば生産台数は減少し、量産効果が薄れ、部品調達の面でもコストアップとなる。ソニーの高級機はさらに高価にしなければ採算が合わなくなるだろう。

スマホ市場で31.4%と最大のシェアを持つサムスンも中国企業の追い上げで苦戦している。しかし、サムスンには市場の3割を持っている強みがあり、価格競争への抵抗力もある。

シェアが4.4%に過ぎないソニーは、サムスンとは別の強みを活かして成長軌道に戻す必要がある。安定した収益を上げているエンターテイメントや金融の力を活用し、スマートフォン上のサービスで付加価値を提供するのもひとつの手段だ。今後、発表されるであろうソニーの成長戦略に期待したい。

谷萩 祐之

著者情報:
谷萩 祐之

1958年生まれ、早稲田大学理工学部数学科卒。富士通株式会社でソフトウェア事業、マルチメディア事業、グローバル事業、コンサルティング事業を担当した後、現在、谷萩ビジネスコンサルティング代表。経営コンサルティングの傍ら、雑誌等で執筆活動を続ける。著書:「Webが変わる プッシュ型インターネット技術入門 」

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