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シャープ、北米のTV撤退検討。相次ぐ日本企業のTV撤退

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シャープは北米のテレビ事業から撤退する検討に入った。収益性が悪化しているためで、メキシコの工場を売却し、販売からも手を引く方向だ。他社に「シャープ」ブランドを供与するライセンス事業に切り替えるなど、具体的な撤退策を今後詰める。シャープは2015年3月期に連結最終赤字となるもようで、不採算事業の立て直しが急務となっている。
同社のテレビ事業は15年3月期に4000億円の連結売上高を見込んでいる。海外市場の不振などで100億円を超える営業赤字となる見通し。北米のテレビ販売台数は14年3月期に約90万台で同社全体の1割強を占めるが、シェアは約2%にすぎない。赤字体質からの脱却が難しくなっており、31日までに撤退の検討を主力行に伝えた。
欧州では昨年、ポーランドのテレビ工場をUMC社(スロバキア)に1億円で売却。自社販売をやめてブランド供与に切り替え撤退した。シャープブランドは北米でも一定の認知度を持つため、欧州と同様に、他社にブランドを貸す可能性が高い。(日本経済新聞2月1日付)

かつては、世界のTV市場を席巻した日本の電機産業だが、グローバル市場では韓国、中国企業におされ、相次いで生産・販売の縮小を余儀なくされている。

東芝は3月からTVの自社開発と販売をやめることを決定しており、パナソニックも中国と北米市場からの撤退を決めている。今回のシャープの動きもこの流れに沿ったものだ。

シャープやパナソニックは、円安が長く続いた時代、プラズマや液晶などの製造で巨額の設備投資を国内で行った。それがその後の円高局面で価格競争力を失う原因のひとつとなった。今また、円安に戻ったが、既に国内の工場は縮小し、日本から海外へ輸出するというモデルは失われて、円安メリットを享受できる状況にない。

このような状況下では、海外の生産拠点を売却して海外市場から撤退し、今日まで培ってきたブランド力を活かしてライセンス料で収益を上げるというのは合理的な判断だ。これによって、電機各社の収益力が回復すれば、むしろ日本の雇用を維持、拡大することにもつながる。今後の日本の電機各社のTV以外の分野での成長戦略に期待する。

谷萩 祐之

著者情報:
谷萩 祐之

1958年生まれ、早稲田大学理工学部数学科卒。富士通株式会社でソフトウェア事業、マルチメディア事業、グローバル事業、コンサルティング事業を担当した後、現在、谷萩ビジネスコンサルティング代表。経営コンサルティングの傍ら、雑誌等で執筆活動を続ける。著書:「Webが変わる プッシュ型インターネット技術入門 」

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