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インターネット決済代行業者の比較分析-決済市場の未来とは?!-

インターネット決済代行業者について分析しました。
分析者:玉崎優

近年私たちの周りには様々なシステムが現れ、私たちの暮らしを豊かにしてきた。
クレジットカードにより銀行からいちいち現金を引き出す必要がなくなり、インターネットのおかげで洋服や家具、さらにはお気に入りのアーティストのライブのチケットまでもが自宅に居ながら買うことができる。

この恵まれた状況が当たり前になっている今日、私は金融業界に興味を持っていて、将来的には金融業界に就職したいと考えているので、今一度このネット決済という金融業界の中でも最も身近な分野について詳しく分析していきたい。

1.インターネット決済とは何か?

ネット決済とはそもそもオンラインショップで買い物をし、インターネットに接続した状態で代金の決済を行うことを意味し、その中でも複数の決済方法が存在している。

  1. クレジットカード決済
  2. 代引き決済
  3. 後払い決済

この3本の柱がインターネット決済の主軸となっている。それぞれの決済方法について説明していく。

ⅰ.クレジットカード決済

まずクレジットカードで商品を購入し、次にカード会社が一時的に料金を立替払いし、最後に期日を迎えたら、カード会社が消費者の銀行口座から料金を徴収するという三つのプロセスからなるシステムのことである。

ⅱ.代引きによる決済

主に宅配事業を手掛ける企業が利用するシステムであり、消費者の自宅に注文した荷物が届けられたタイミングで代金を支払うといったものである。

ⅲ.後払い決済

決済手段として後払いを選択すると、商品とは別便で請求書が届き、定められた期日までにコンビニなどで支払いをするといったシステムのことである。


経済産業省による消費者の決済方法の利用率調査によると、クレジットカード決済は44,3%、代引きによる決済は15,6%、後払いによる決済は24,6%である。

消費者の決済方法別構成比(%)出典: 消費者向け電子商取引実態調査2009年(http://www.meti.go.jp/statistics/tyo/denshi/pdf/21gaikyo1.pdf)第15図参照

またこれらの決済が行われる市場が、E-commerce(電子商取引、EC)市場であり、次のA~Cの3つの取引に大別される。

  1. 企業同士の取引をBtoB
  2. ネットショップなどの企業と消費者間の取引をBtoC
  3. オンラインオークションなどの消費者同士の取引をCtoC

経済産業省によると、平成 24 年の日本国内のBtoB-EC(企業間電子商取引)市場規模は、262 兆円(前年比 101.7%)、日本国内のBtoC-EC(消費者向け電子商取引)市場規模は、9.5兆円(前年比 112.5%)まで拡大している。10年間で10倍以上に成長しており、EC市場は爆発的に成長している業界であるといえる。

日本の BtoC-EC 市場規模の推移
出典:「平成25年度我が国経済社会の情報化・サービス化に係る基盤整備
(電子商取引に関する市場調査)」の結果公表について(調査結果要旨)(< a href=”http://www.meti.go.jp/press/2014/08/20140826001/20140826001-2.pdf” target=”_blank”>http://www.meti.go.jp/press/2014/08/20140826001/20140826001-2.pdf)

2.後払いによる決済について

今回は複数ある決済システムの中でも「後払い決済」について深堀して分析を行う。

ビリングシステム、ウェルネット、ネットプロテクションズ、ベリトランス、ネクストペイメント、スマートリンクス、ルミーズ、GMOペイメントゲートウェイなどの会社が後払い決済事業を展開している。

先ほども述べたように、後払い決済は、エンドユーザーに商品とは別便で請求書が届き、定められた期日までにコンビニなどで支払いをするというものである。
これを後払い決済会社の視点で見てみると、加盟店から債権(代金の回収権)の手数料を天引きした値段で買い取り、コンビニなどの後払い窓口を通じてエンドユーザーから回収する事業であり、銀行のファクタリングに類似したものである。

エンドユーザーにとっての後払い決済のメリットは、商品を見てから入金すること可能になることである。一方で加盟店にとっては早期入金と代金回収リスクがヘッジできることがメリットとなる。後払い決済会社は当然手数料を取るために、代金回収が滞りなく行われれば、利益を得ることがそれぞれできる。

(例)GMOペイメントゲートウェイの後払い決済システムの一例

GMOペイメントウェイ「PGマルチペイメント・フレームワーク」出典:GMOペイメントゲートウェイHP(http://www.gmo-pg.com/campaign/lp006)

しかしこの後払い決済事業には、料金を回収できなくなってしまうリスクが存在する。

かっこ株式会社の実施した調査によると、不正や代金未回収の疑いがある取引の割合は後払いによる決済全体の約10%である。(これには非常に驚いた!!!)

2013年下期(6月~12月)のネット通販における不正取引の割合出典:かっこ株式会社「ネット通販取引のリピーターのうち、 支払期限超過経験者の未回収リスクは3.3倍!2013年下期のEC不正取引分析公開」(http://cacco.co.jp/information/products/ネット通販取引のリピーターのうち、-支払期限超/

なお、後払い決済の未回収原因は、宛先の不備(番地や部屋番号のない住所や郵便番号と市区町村が異なる住所からの注文や、自宅以外の場所に受取先が指定されている注文)が大多数を占める。これを防ぐためには、しっかりとしたリスク管理が必要である。

私は、後払い決済会社が講じるべきリスク管理は以下の通りと考えた。

  • 取引金額が少額であること(額が大きいと未回収の際の損失が大きい)
  • 登録住所の定住確認(水道代金や光熱費が支払われているか)
  • 転売目的をさけるために、換金性の高いものは避ける(転売による利益を見込んでの注文だと、代金が確実に払われるか定かではないため)
  • イレギュラーな商行為となっていないか(利用者の通常の取引額を大幅に上回る注文などは要注意)

後払い決済は消費者からのニーズも比較的高く、非常に多くの企業が採用しているシステムではあるが、一方で未回収のリスクが存在しており、後払い決済事業者には未回収率を一定に低減させる取り組みが必要となる。

3.今後の決済市場に関する考察

繰り返しになるがEC市場は成長を続けており、業界全体で直近3年間は10%ずつ売上が増加しており、今後も一定の成長は期待できる。

本トピックでは更にこの業界の後払い決済会社について個別に分析する。後払い決済事業社をどのように評価するのか三上さんに確認したところ、まずは取引総額(手数料総額=売上)を調べてみたらどうか?と指摘があった。

後払い決済企業比較表をクリックして拡大
後払い決済企業比較

過去3年間の売上の合計数値を見てみると、佐川フィナンシャルやヤマトフィナンシャルが非常に高水準であったが、この2社に加えて日通キャピタルは物流大手であり、代引き決済を相当量行っているために除外して分析する。

後払い決済事業者では、ソフトバンクペイメントサービスが23,781,794で最高、ビリングシステムの3,373,002が最低であった。ソフトバンクペイメントサービスは、親会社のソフトバンクの携帯電話を利用したサービスも展開しているため利益水準も10%前後で安定している。

ビリングシステムは近年売上・利益の浮き沈みが激しいので個別に有報などを確認したが、同社が展開しているクイック入金サービスが収益の鍵を握っている。クイック入金サービスは為替取引などをメインにしている証券会社を主要顧客として、為替や株の取引などの決済処理を代行し、証券会社の銀行振込入金をリアルタイムで確認したいというニーズに応えるものとなっている。

クイック入金サービスは、株や為替の相場変動が激しくなると取引量が増えニーズが増える一方、相場が落ち着いてしまうと需要が低くなってしまう。この商材の依存度の高いビリングシステムは現在相場安定に伴い、売上も伸び悩んでいると思われる。

また直近3年間の利益率に焦点を当ててみると、GMOペイメントゲートウェイが業界の平均値が10%前後であるのに対して、20%越えと群を抜いて高い。この利益率の高さは2014年度の決算短信を見ると、3つ理由があることが分かった。

1点目:
加盟店数・決済処理件数・決済処理金額が景気の回復の影響もあって増加したため

2点目:
継続課金分野の拡大(決済代行サービスの拡大etc.水道代金など)

3点目:
付加価値サービス・新規分野の拡大(配送サービスや早期入金サービス)

一方でビリングシステムが0%と不調である。これには2012年に投資有価証券として保有していたイーエムシ―株式会社が破産し、特別損失を計上した影響がある。しかしながら、クイック入金システムや収納代行サービスが好調だったため、2013年度は黒字に戻っている。同社は現在新規事業の開発、その全国展開を推進しており、現状その基盤づくりの段階とも捉えることができる。

最後に生産性を分析する。社員1人当たりの生産性が高い企業ということはそれだけ優秀な仕組みが整っている、または有能な人材を揃えているといえる。但し、正社員に加えて派遣、外部のアウトソーシングの活用など、近年は会社の従業員の実態が捉えにくくなっているので、この分析は正しいものかは不安でもある。

社員1人当たりの売上/利益を分析するとペイジェントは売上238,981、利益38,692であり、同業者の中でも非常に高い水準であった。1人当たり売上は、ベリトランス109,455 、ゼウス85,481、ネットプロテクションズ70,358 と続く。1人当たり利益は、ウェルネット10,400、ベリトランス9,830 、ゼウス7,025 であった。

4.インターネット決済代行業者について調べてみての感想

普段何気なく利用しているクレジットカードやコンビニでの後払いシステムは、こんなにも多くの企業がそれぞれ展開していたとは知らなかったので、今後はどの企業が展開するシステムを店舗が利用しているかなどに注意して利用していきたい。

さらには今後もこの分野は成長をしていくと考えられ、継続的にこの分野の情報に目を通していきたい。また、ネット決済の業界は自身の興味のある銀行業界とも繋がりがあると思われるし、成長中の業界であるので、銀行業界を分析する際にはこの分野にも着目していきたいと思う。今回のレポートが初めてヘッドハンティングのジーニアスで書いたレポートであり、慣れないことも多かったがこの経験を次に活かしていきたいと思う。

玉崎優

玉崎優

著者情報:
玉崎優

1,994年千葉県生まれ。2013年に早稲田大学商学部に入学。専攻はデータを基にした統計的アプローチによる経営戦略研究。大学2年の6月に将来を見つめ直しジーニアスの門を叩く。その後インターンの傍らサッカーサークルの幹事長を務める。現在は金融・コンサルティング業界を主軸に就職活動中。

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