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「人材紹介市場は前年度比113.0%の1,300億円」(矢野経済)

人材紹介市場は前年度比113.0%の1,300億円

矢野経済の人材ビジネス市場に関する調査結果が発表された。サマリーは以下の通り。

  1. 2013年度の人材派遣業市場は前年度比101.7%の3兆7,800億円と推計、増加に転じる
  2. 2013年度の人材紹介業市場は前年度比113.0%の1,300億円、4年連続の拡大
  3. 2013年度の再就職支援業市場は前年度比99.7%の310億円、微減推移

人材紹介市場は2010年度以降4年連続で成長しており、高水準の求人需要が存在する。これはリーマンショック意向の有効求人倍率や全国求人情報協会の求人数統計でも明確だが、常に前年度プラスのトレンドで推移している。但し、直近3ヶ月だと明らかに媒体掲載の新規求人数はピークアウトした傾向が見受けられる。
現状バンク型の人材紹介会社では新規求人を増やすことよりも、登録者を如何に獲得するのか、既存DBの掘り起しを如何に行のかに経営者の注意が置かれていることも多く、当社にも集客セクションの責任者を求める依頼が増えている。
また、従来アナログ形式のDBでマッチングを運用していた会社が新しくシステム導入を行う動きも増えており、ポーターズやブレインラボ、マッチングッドといった人材系ERP事業を運営する会社も好調と聞く。

変わったこと、変わらないこと

4年連続で成長する人材紹介業であるが、リーマンショック前と現在を比較した場合(これはかなり肌感覚ですが)、変わったこと、変わらないことについても考えたい。

<変わったこと>

1.成功報酬型の求人サイトが増加
リクルートのRANやインテリジェンスのDODA-MAPS、ビズリーチなど成功報酬型の求人サイトが増加した。
これまでは月額固定の広告型の求人サイトが大半であったが、既存の大手人材紹介会社のDB解放と成功報酬体系の導入で、既存の求人サイトを運営する会社はプライシングモデルを変える必要が出てきている。
従来非常にストック型で安定していた求人サイト運営企業がフロー型の商売に切り替わりつつある。そして登録者の母体数が事業の将来を半ば決めてしまいそうだ。

2.業界、職種別の専門分化が進んだ
リーマンショック前から、医療系のエス・エム・エスや製造業専門特化のメイテックネクスト、マスコミ・クリエイティブ系のクリーク・アンド・リバー、会計・財務中心のMSジャパンなど業界や職種に専門特化した人材紹介会社はあった。
リーマンショック以降は、これらの専門特化型1番手に続く企業が増え、専門型のすそ野も広がっている印象だ。特に医療系は各資格(看護師、医師、薬剤師など)を専門とする会社が事業規模を拡大し、存在感を増している。

3.資本系が撤退した
三菱商事系のメイツはリクルートへ、伊藤忠商事系のキャプランと三井物産系の物産ヒューマンリソースはパソナへ、NTTドコモ系のドコモ・サービスと日経グループ系の日経スタッフ、東電系のキャリアライズはテンプスタッフへ売却されている。またパナソニック系のパナソニックエクセルスタッフも年内には売却先が決定されようとしている。
現状資本系で残っているのは丸紅系とみずほ系が統合したアヴァンティスタッフ、旭化成系のアミダス、東京海上系の東京海上日動キャリアサービスなどであるが、いずれも本社の中核事業とは目されていないために、将来的には資本系人材紹介会社(派遣会社)の売却は進むように考えられる。

<変わらないこと>

1.首都圏中心であること
人材紹介の事業社も求人も首都圏及び京阪神、名古屋の3大都市圏に集中している。
一部メーカー系列の人材会社が地方の主力工場向けの求人を独占し、特定地方に案件が増加することはあるが、一般的には情報も仕事も東京を中心とした大都市に集中している。
なお、当社でも1ヵ月に1,2件問い合わせのある事業承継ニーズは、地方にも万遍なく存在しており、求職者の多い大都市圏よりも、供給がタイトな地方が採用に苦労している。人口動態を踏まえても団塊世代の創業オーナーが引退年齢を迎えつつあり、段階世代が70歳に突入する2020年位までは増加し続けるように感じられる。

2.リクルートが強いこと


リクルートの人材メディア事業(リクナビなど)は事業単体で2,669億円、人材派遣事業(スタッフィング、スタッフサービス含む)で6,124億円、内リクルートキャリアは676億円程度である。テンプHDに買収されたインテリジェンスが紹介・媒体・アウトソーシングの合算で売上770億円弱のため、人材紹介単体でも依然として国内NO1だと思われる。(内部の方で正誤があればお知らせください。)
また、リクナビ求職者DBの解放(RANサービスの上市)によって、従来エン・ジャパンやソフトバンクヒューマンリソースなどの人材紹介会社向けの求人サイト事業においてもシェアを拡大している。
私も時々同業者と情報交換するが、会社によっては成約リソースの7~8割がRAN経由という話も聞く。当社のようなスカウト型サービスの会社でも3割程度はRAN経由の成約となっている。
RAN登録者層として少ないコンサル業界やエンジニア系の一部の業種、または医師や看護師、薬剤師といった専門職、元来登録型バンクに少ないシニア層を除くと多くの人材紹介会社の人材リソースとしてポジションを確立しつつある。

3.コンサルタントの給料
一部のリテイナーファームとハイエンドの人材紹介を少人数で行っているブテッィク型の企業は別として、ほとんどの人材紹介会社の社員1名当たりの売上高は1500~2000万程度だ。
人材紹介は元来売上原価がほとんどかからない事業モデルのために、粗利も変わらない。そのためリーマンショック前と2014現在(リーマン直後のクラッシュ状態はどこも脱しているか、耐え切れずに倒産している)を比べても、コンサルタントの給料は余り変わっていない印象だ。1人あたりの生産性が2500万円程度のリクルートキャリアは分業側大手としては例外的に2割くらい給料は高いと考えられる。

 

なお、矢野経済のレポートだと2014年度の人材紹介市場は、前年度比111.5%の1,450億円を予測している。
皆さんの会社は市場成長に比べてどんなものでしょうか?

それにしても、矢野経済のレポート良いお値段。12万円。どなたか購入された方がいらっしゃったら別途講評頂ければと・・・

三上 俊輔

著者情報:
三上 俊輔

2006年、早稲田大学法学部(専攻労働法)を卒業後、独立系エグゼクティブサーチ会社であるサーチファーム・ジャパン株式会社に入社。柔硬幅広い業界の部門長クラス以上の経営者獲得、スペシャリスト(エンジニア、会計士など)採用を実現。 2011年、サーチファーム・ジャパンより組織戦略及び技術コンサルティング事業を分社化し、ジーニアス設立、代表取締役就任。 理論と実践のギャップを埋め、健全なる雇用環境の発展に微力ながら貢献すべく、スカウトその他様々なプロジェクトを戦略的に遂行している。

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