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AIで事務が消える… 明治安田生命、女性1900人を転換

明治安田生命保険は1900人の女性契約社員を4月に正社員へ登用する。これまで契約社員が主に担っていた定型事務はITに取って代わられている。優秀な人材に能力とやる気に応じて中核業務を担ってもらう。一時的に人件費コストは膨らむが、働き手不足が生じる未来への投資という位置づけだ。
(日本経済新聞 3月29日)

すべての業務がAIで代替できるわけではないが、AIを始めとするITの進化によって、金融業界の事務作業が軽減されてきているのは事実だ。保険会社や銀行では、事務を担当する契約社員の仕事は減少傾向にある。人員削減も行われているが、金融機関の契約社員には優秀な社員も多く、他の職種に転換して正社員として活躍してもらう方が本人にとっても会社にとっても有益な場合は少なくない。また、IT化されたとはいえ、事務処理の業務フローを理解している人が社内にいなくなるのはリスクが高い。さらなる業務フローの改善やシステム・トラブルが発生した場合の対応など、業務の中身に精通した人が必要なケースは今後もある。こうした背景を考慮すれば、明治安田生命が契約社員の7割を正社員に転換したことは合理的だ。

一方で、長期的にみれば、日本国内の保険業界は成長が鈍化し、価格競争が激化する可能性が高い。営業や事務処理に要する人件費を圧縮して保険料を抑制していくことが必要だ。総人件費を減らしつつ、新たなイノベーションを生み出せる人材に投資することが求められる。今回、明治安田生命は、契約社員の7割を正社員にし、その年収を10%アップすることによって、0.7×1.1=0.77、即ち、23%程度の人件費削減余地を作る一方で、1900人の有能な人材を正社員として長期的に確保することを可能にした。

谷萩 祐之

著者情報:
谷萩 祐之

1958年生まれ、早稲田大学理工学部数学科卒。富士通株式会社でソフトウェア事業、マルチメディア事業、グローバル事業、コンサルティング事業を担当した後、現在、谷萩ビジネスコンサルティング代表。経営コンサルティングの傍ら、雑誌等で執筆活動を続ける。著書:「Webが変わる プッシュ型インターネット技術入門 」

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