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雇用逼迫、成長の壁に 失業率22年ぶり低水準

労働需給が一段と逼迫してきた。2月の完全失業率は2.8%まで下がり、有効求人倍率も四半世紀ぶりの高水準だ。深刻な人手不足で中小企業を軸に賃上げ圧力が強いものの、非正規増加や将来不安で消費には点火しない。雇用改善は所得増や物価上昇を通じて成長を加速させるはずだが、人口減に突入した日本経済では労働供給の制約が「成長の壁」になっている。
失業率が2.8%になったのは1994年6月以来、22年8カ月ぶりだ。働く意欲と能力を持つ人がすべて雇われ、これ以上は失業率が下がりにくい「完全雇用」といわれる状況だ。日本経済新聞社の調査では2018年春の大卒採用は17年春よりも10%近く増える見通し。大都市圏のパート時給は1000円を超えた。多くの人に雇用の門戸が開かれた良好な状態にある。

労働市場が急速に引き締まっている理由は大きく2つだ。1つ目は人口減。15~64歳の生産年齢人口は1997年の8699万人をピークに減り続け、2月は7620万人だった。20年間で約1000万人、年平均でおよそ50万人という先進国では例をみないペースで減っており、働き手の補充が追いつかない。
景況感の改善がもう1つだ。2月の鉱工業生産指数(2010年=100)速報値は102.2と前月比2.0%の上昇だった。世界経済の緩やかな回復という温風が波及し、日本企業も先回りして人手を確保しようとする動きが活発だ。
(日本経済新聞 4月1日)

本来、完全雇用は、望ましい状態であり、国の経済政策が達成すべき目標のひとつだ。しかし、一方では、労働力の流動性が枯渇し人手が確保できないため、営業時間の短縮や受注の削減など事業の縮小を迫られるケースも増える。こうなると、雇用の逼迫は経済成長の抑制要因となる。

人手不足を解消するためには、労働市場への参加者を増やす必要がある。長時間労働の規制強化などの働き方改革は、労働市場への参加を容易にする上で効果が期待できるが、残業時間の抑制は、短期的には、企業の人手不足に拍車をかけることとなり、むしろ成長を抑制する側面を持つ。

ずべての問題を一挙に解決する解を見出すのは難しいが、ひとつの方向性は、労働生産性のより高い仕事へ労働力をシフトさせることだ。その意味では、人手不足のためにコンビニが深夜営業を止めるのは必ずしも悪いことではない。コンビニにとっては、売上の減少ではあるが、コンビニで深夜働いていた人が、他の仕事に移って今まで以上の付加価値を創造するなら、国民経済全体では、より多くの富を生産したことになる。一方、人の減ったコンビニは、深夜営業の生産性を上げるよう努力する。社会全体としては、産業を越えたマクロな視点で労働力の全体最適を目指すことが重要だ。

谷萩 祐之

著者情報:
谷萩 祐之

1958年生まれ、早稲田大学理工学部数学科卒。富士通株式会社でソフトウェア事業、マルチメディア事業、グローバル事業、コンサルティング事業を担当した後、現在、谷萩ビジネスコンサルティング代表。経営コンサルティングの傍ら、雑誌等で執筆活動を続ける。著書:「Webが変わる プッシュ型インターネット技術入門 」

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