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AI人材、電機も食指 ソニーは新卒採用に専門枠

大手企業による人工知能(AI)技術者の採用意欲が高まり、電機や自動車を中心に争奪戦の様相を呈してきた。ソニーは新卒採用に専門枠を設け、日立製作所も米国の開発拠点で100人を採用し200人規模にする。あらゆるモノがネットにつながる「IoT」を活用し、新たな収益源となる製品やサービスを開発するにはAIが重要との判断だ。ただ、人材は世界的に数万人規模で不足しているとの指摘がある。
新しい技術であるAIは、大学が輩出する人材が需要に追いついていない。数学や機械工学の専攻者の中から、企業はプログラミング言語やデータ分析にたけた人材を集め、育てながらAI開発の組織を立ち上げていく考えだ。

ソニーは2017年春入社からAI研究者専用の新卒採用枠をつくる。「機械学習人工知能研究開発コース」とし、大学などからAI専門の研究者を募集する。人数制限を設けず、できるだけ多く採用する考えだ。
今年5月、米有力ベンチャーに出資し、AIの共同開発を新たに始めた。中途採用と並行し、国内では新卒のAI人材を囲い込む狙いだ。

日立は米カリフォルニア州サンタクララに開設したIoTの基盤技術の開発拠点で、17年3月末までに現地でAIの技術者ら100人を採用する。日本からも100人を送り込み、200人の研究体制とする。米国ではスマートグリッド(次世代電力網)などのインフラ構築に取り組んでおり、AIを使って電力需要を正確に予測する。
(中略)
産学連携で人材を育成する動きも広がっている。トヨタ自動車やパナソニックなどはこのほど、東京大学に「先端人工知能学教育寄付講座」を設置した。計約9億円の寄付金をもとに、年間150人程度にAI関連の技術や知識を教え、研究者育成につなげる。企業側には将来の人材獲得につなげる狙いもある。
(日本経済新聞 6月10日)

自動運転など人工知能(AI)の用途が急拡大している自動車産業だけでなく、もともとAIを提供するビジネスをしてきた電機産業でもAI人材の不足が顕在化してきた。

ソニーに限らず、日本の主な電機メーカーは、従来から多くのAIの研究者を育ててきたが、それでもAIの利活用の範囲の拡大に追いつかない。また、AIの応用が広がるにつれ、AIを利用する側の企業でのAI研究者の需要が拡大し、電機メーカーとの間で人材の奪い合いになっている。

このAI人材不足を短期的に解決するには、研究開発拠点をグローバルに展開して流動性の高い海外の人材を確保することが近道だが、抜本的には、産学連携でAIの先端研究者を増やすとともに、AIを利活用できる人材のすそ野を広げることが重要だ。そのためには、電機メーカーは、今の難解なAIをより洗練させ、家電のように簡単に利用できる技術に進化させる必要がある。

谷萩 祐之

著者情報:
谷萩 祐之

1958年生まれ、早稲田大学理工学部数学科卒。富士通株式会社でソフトウェア事業、マルチメディア事業、グローバル事業、コンサルティング事業を担当した後、現在、谷萩ビジネスコンサルティング代表。経営コンサルティングの傍ら、雑誌等で執筆活動を続ける。著書:「Webが変わる プッシュ型インターネット技術入門 」

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