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冬のボーナス3.3%増で7年ぶりの80万円台

日本経済新聞社が10日にまとめた2015年冬のボーナス調査(2日時点)によると、全産業の1人当たりの税込み支給額(加重平均)は前年比3.30%増の80万1163円だった。プラスは3年連続で、支給額が80万円台に乗るのはリーマン・ショック直前の好業績を反映した08年以来、7年ぶり。年末年始の商戦に向け、足踏みする個人消費を押し上げそうだ。

企業の業績好調を受け、全34業種のうち28業種で支給額が前年を上回った。円安で輸出が堅調な製造業に加え、訪日外国人客の需要を取り込んだ小売りや鉄道などが増額となった。
非製造業の支給額は1.69%増の65万2032円と、4年ぶりにプラスに転じた。小売りや外食などで人材を確保するために処遇を改善する傾向も出ている。
製造業の支給額は3.68%増の84万9279円で、3年連続のプラスだった。自動車や電機のほか、原油安で採算が改善している化学や繊維などの素材が伸びた。
製造業、非製造業ともに今春の賃上げが支給額の押し上げに寄与した。

雇用環境が改善する一方で消費支出は10月まで2カ月連続で減り、消費者の節約志向は根強い。ボーナスの支給増は消費マインドの好転を招き、高額品などの購入を促す効果が期待される。
(日本経済新聞 12月11日)

今年の春闘のベースアップが高かったこともあり、大企業の冬のボーナスは久々の80万円超えとなった。特に、製造業では円安と資源安が追い風となり、全17業種で支給額が前年を上回っている。ボーナスの増加は年末年始から来春にかけての個人消費の押し上げに一定の効果はあるだろう。

ただ、足元では、中国経済の減速の影響が新興国に波及し、日本の製造業の業績を圧迫している。加えて12月に入ってからの原油価格の急落は、日本の国富の流出を減らす点ではプラスだが、一方で、経常収支の黒字を拡大させて円高の要因となる。こうした先行きの不透明感は、経営陣だけでなく、従業員も肌で感じており、冬のボーナスの支給増が消費の増加に直結するかどうかは微妙だ。

収入の増加が消費の拡大につながるには、将来の安定成長を期待できる状況になることが重要だ。企業も政府も外部環境の変化に振り回されない信頼に足る成長戦略を提示する必要がある。

谷萩 祐之

著者情報:
谷萩 祐之

1958年生まれ、早稲田大学理工学部数学科卒。富士通株式会社でソフトウェア事業、マルチメディア事業、グローバル事業、コンサルティング事業を担当した後、現在、谷萩ビジネスコンサルティング代表。経営コンサルティングの傍ら、雑誌等で執筆活動を続ける。著書:「Webが変わる プッシュ型インターネット技術入門 」

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