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三菱UFJ、法改正を先取りし契約社員を60歳まで雇用

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三菱東京UFJ銀行は約1万1千人の契約社員の雇用を60歳まで保証する。勤続3年以上で本人が希望する人を対象に2015年4月から実施。新たな休職制度などを設け、待遇改善も進める。13年に施行された改正労働契約法を先取りする動きだ。長く働ける環境をつくり、人材をつなぎ留める狙いからも、他の企業に広がりそうだ。
三菱UFJは約4万5千人の従業員のうち契約社員が25%を占める。女性が多く、営業店での窓口業務や、事務などの仕事をしている。重要な戦力になっているが、原則1年か、6カ月の雇用契約だ。更新できず打ち切られる懸念もあった。
15年4月から仕事の内容を限定し、60歳の定年まで働ける新たな形態を設ける。勤続3年以上で欠勤などの問題がない人を対象に希望者を募る。
(日本経済新聞7月25日)

銀行の窓口業務を担当するテラーと呼ばれる従業員は、かつては正社員であったが、今は、その多くが契約社員だ。事務作業のIT化が進み、残された手作業も厳密に定義されたマニュアルに沿って行われるため、手順を覚えれば専門的な教育を受けた正社員でなくてもできる。ただし、滅多に発生しない例外的な仕事への対応は経験がものをいう。

たとえば、三菱UFJ銀行のようなメガバンクにとって厄介な窓口業務は税公金の処理だ。コンビニでも税金や公共料金の振り込みができるが、コンビニはバーコード付の伝票以外は受け取らない。一方、銀行は昔からすべての伝票を受け付けてきたため、今さら手間のかかる伝票だけ断るわけにはいかない。特に、全国に支店を持つメガバンクは、全支店で全国の税公金を受け付けなければならない。札幌支店でも沖縄の水道料金の支払いを受け付けることが求められる。このような手続きを迅速に過誤なく処理するには、経験豊富なテラーが各支店に必要だ。

今回の契約社員の雇用延長は、改正労働契約法を先取りする動きとして報じられているが、法改正がなくても銀行としては実施する意義がある。むしろ、航空会社が一旦増やした契約社員の客室乗務員を正社員に戻そうとしているのと軌を一にする動きだ。

谷萩 祐之

著者情報:
谷萩 祐之

1958年生まれ、早稲田大学理工学部数学科卒。富士通株式会社でソフトウェア事業、マルチメディア事業、グローバル事業、コンサルティング事業を担当した後、現在、谷萩ビジネスコンサルティング代表。経営コンサルティングの傍ら、雑誌等で執筆活動を続ける。著書:「Webが変わる プッシュ型インターネット技術入門 」

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