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ソニー、管理職比率を2割に半減し、年功要素を完全に撤廃

20150409

ソニーは4割超に達していた本体の正社員に占める管理職の比率を2割に半減する。年功要素をなくし、役割に対する報酬を明確に定めることを柱とする新人事賃金制度が今月1日に始動した。制度刷新は10年ぶり。テレビやスマートフォン(スマホ)などエレクトロニクス事業が縮むなか、硬直化した組織を見直し、膨らんだ本社の固定費にメスを入れる。
管理職の正確な人数は明らかにしていないが、ソニー単体の管理職は社員の4割を超えていたという。これを2割に減らし、スリムな組織で意思決定のスピードを高めるなど活性化も目指す。有価証券報告書によると、2013年度末の社員数は約1万4千人だった。
新制度では「現在果たしている役割」のみを評価する。年功要素を完全に排除し、役割給制度を厳密に運用する。従来も年功要素を廃する設計だったが、実績や将来の期待も含め評価するため年功要素が残っていた。
これまで管理職相当に昇格すると降格する仕組みがなく、組織変更などで実態が伴わなくなる事例もあり、「部下なし課長」のような処遇の社員が増えていた。新制度では降格すると報酬も減る。人件費の抑制額などは未集計だとしている。
新制度の導入で管理職が減るだけでなく、役割に基づき約1割が入れ替わる。20代の管理職が生まれるなど、組織の新陳代謝も進む見通しだ。メリハリをつけた評価を徹底する方針で、若い世代の積極登用など「がんばる人が報われる」という競争原理を働かせる。
「高齢化による逆ピラミッド型の人員構造」「管理職比率4割超」――。長年、手をつけられなかった人事賃金制度の構造的な課題に切り込む背景には、経営執行部の強い危機意識がある。
「エンターテインメントと金融がなければソニーはつぶれてもおかしくなかった」。1月。新制度の社内説明会では、平井一夫社長のビデオメッセージが流れ、現状に対する危機意識の共有や制度改革への理解を社員一人ひとりに求めた。
エレキ部門が主体のソニー単体は08年度から6期連続の経常赤字。しかしエンタメや金融を含む連結ベースでは利益がかさ上げされ、漫然とした安心感が生まれ「経営や社員の危機意識の欠如を招いていた」(外資系証券アナリスト)という。
エレキ事業は07年度のピーク時に売上高が5兆9千億円だったが、13年度には3兆2千億円まで縮小した。ところが本社の固定費はピーク時よりも多い1450億円に膨らんだ。「本社の高コスト体質を変えられるかが最大の挑戦」(吉田憲一郎副社長)だった。
(日本経済新聞4月5日)

管理職の割合を減らし、意思決定のスピードアップを図るのは、市場の変化が激しい電機業界にあっては正しい選択だ。加えて若い世代の管理職が誕生し、ある程度の権限を持つようになれば、新しい発想に基づくソニーらしい新製品の開発に弾みがつくことも期待できる。

ただ、ウォークマンや小型ビデオのハンディカムなど他社にない新製品を世に送り出していた時代のソニーは、技術的な優位を確立してから商品化を行っていた。それゆえ、ソニーの新商品発売から1、2年は、他社は追随することができなかった。

技術的優位を確立するには時間がかかる。現在果たしている役割とその役割に見合う成果で報酬が決められた場合、種をまいた管理職より実を採った後任の管理職が得をすることもある。評価があまりに短期的な成果に偏ると、逆に、ソニーらしさを失うことにもなりかねない。

一般に、管理職は、その地位が上がれば上がるほど、当期の売上や利益などの財務指標で評価される割合が高くなる。ソニーのエレキ事業が復活するには、これに加えて、将来の利益につながる効果的で効率的な投資をしたかという観点で評価する必要がある。

谷萩 祐之

著者情報:
谷萩 祐之

1958年生まれ、早稲田大学理工学部数学科卒。富士通株式会社でソフトウェア事業、マルチメディア事業、グローバル事業、コンサルティング事業を担当した後、現在、谷萩ビジネスコンサルティング代表。経営コンサルティングの傍ら、雑誌等で執筆活動を続ける。著書:「Webが変わる プッシュ型インターネット技術入門 」

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