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2015春闘一斉回答日、ベア(ベースアップ)最高相次ぐ

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平成27年春闘は18日、自動車や電機などの主要企業の集中回答日を迎えた。基本給を一律に引き上げるベースアップ(ベア)で、月額3千円以上が目立ち過去最高水準での妥結が相次いだ。主要企業のベアは2年連続。高水準のベア妥結による賃上げの動きを今後、中堅・中小企業に波及できるかが、「経済の好循環」を実現するうえでの焦点となる。
集中回答の結果について、安倍晋三首相は同日の参院予算委員会で「過去15年で最高だった昨年の水準をさらに上回る勢いだ。こうした流れがしっかりと広がっていくことを期待したい」と述べた。
トヨタ自動車の回答はベア4千円と、過去最高だった。日産自動車はトヨタを上回る5千円、ホンダは3400円。日立製作所やパナソニック、東芝などの電機大手各社も、前年の2千円の1・5倍に相当する3千円と、過去最高で足並みをそろえた。
年間の一時金(賞与)も高水準の回答が相次いだ。トヨタが6・8カ月の要求に満額回答したほか、三菱電機が6・03カ月、ホンダが5・9カ月などだ。
自動車や電機などの産業別労働組合でつくる「金属労協」の集計によると、回答した31組合の賃上げ額の平均は2978円。27組合の一時金の平均は5・39カ月だった。相原康伸議長(自動車総連会長)は同日の会見で、「デフレ脱却と経済成長に向けて、昨年より歩幅の大きい2歩目を踏み出すことができた」と話した。連合の古賀伸明会長も、「デフレ脱却に一定の道筋をつけた回答」と評価した。経団連の榊原定征会長は、「中小企業も賃上げで対応すれば、消費の拡大につながっていく」と、大手の賃上げが波及していくことに期待を示した。
今春闘では、連合が2%以上の統一ベア要求方針を掲げたのを受け、主要企業の労組が6千円を求め、スタートした。
労使交渉は前年に続き、経済の好循環実現を求める政府の意向を背景に進んだ。大手自動車・電機は円安で輸出の採算が改善し、業績が堅調に推移していることもあり、経営側が高水準のベアを容認する流れとなった。(産経新聞3月19日)

労使交渉が大詰めを迎えていた15日午後、トヨタが4千円のベースアップを提示したことにより、自動車、電機業界にベア上積みの流れが波及した。トヨタの提示額を見た各社は最終局面で一斉にベアを増額し、18日の集中回答日には、過去最高のベアが続出する結果となった。

日本経済新聞が大企業経営者に対して行ったアンケートによれば、50.9%の経営者が定期昇給を含む賃上げ率を前年並みかそれ以上にすると答え、ベアを予定している企業は82.8%に上っている。一斉回答日に過去最高のベアが相次いだことにより、この流れは加速するだろう。

今年の春闘の特徴は、利益の出ている企業は積極的に賃金を上げるという傾向がより鮮明になったことだ。

大企業の多くは昨年も賃上げを行ったが、40%程度の企業は、2%以上2.5%未満の賃上げ率であり、その上下に位置する2.5%以上3%未満と1.5%以上2%未満の賃上げ率の企業がそれぞれ20%程度あった。これは、2~2.5%を中心とする正規分布に近い。

一方、今年は、賃上げ率全体が上方へシフトするとともに、賃上げ率が2%以上2.5%未満、2.5%以上3%未満、3%以上の各層の割合が、15~20%の間に並んでおり、中心となる賃上げ率の層がない。

賃上げ率を全産業の中心値からの相対的な乖離率で判断するのではなく、自社の利益水準を重視して判断するようになったことの表れだ。これによって、業界や企業の間で賃金格差が拡大する可能性はあるが、賃金全体の水準はトヨタのような好業績の企業に牽引されて上昇しやすくなる。この賃金上昇トレンドが自動車、電機以外の業界へも波及すれば、日本経済が完全にデフレから脱却する日も近くなる。

谷萩 祐之

著者情報:
谷萩 祐之

1958年生まれ、早稲田大学理工学部数学科卒。富士通株式会社でソフトウェア事業、マルチメディア事業、グローバル事業、コンサルティング事業を担当した後、現在、谷萩ビジネスコンサルティング代表。経営コンサルティングの傍ら、雑誌等で執筆活動を続ける。著書:「Webが変わる プッシュ型インターネット技術入門 」

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