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ソニー(SONY)全事業分社化、新たな成長と雇用増につながるか?

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ソニーは18日、本体で手掛けるエレクトロニクス事業の全事業を順次、分社する方針を明らかにした。まず携帯音楽プレーヤー「ウォークマン」やブルーレイ・ディスク録画再生機などを扱うAV(音響・映像)事業を10月1日をめどに分社する。競争環境は厳しさを増している。意思決定を速めて環境変化に素早く対応し、利益重視の経営を徹底する。
10月に分社する「ビデオ&サウンド事業」の2014年度の売上高見通しは約3800億円。ソニーのエレキ事業の売上高の7%を占める。ソニーを代表するブランドとして市場を席巻したウォークマンのほか、家庭用オーディオ機器、ヘッドホンなどのオーディオ周辺機器が含まれる。
ソニーはエレキ事業の立て直しの一環として、10年連続で営業赤字を計上したテレビ事業を14年7月に分社した。新設したテレビ子会社はコスト削減や高付加価値商品への絞り込みに素早く取り組み、14年度には黒字転換する見通しだ。
分社の対象を黒字経営のAV機器やデバイス、デジタルカメラに広げることについて、平井一夫社長は「組織の階層を減らし、意思決定を速める一方、結果・説明責任を明確にする」と述べた。
(日本経済新聞2月19日)

ソニーは、テレビ事業の分社に続き、これまでソニーを支えてきた中核事業であるエレキ事業からビデオ&サウンド事業の分社を決定した。残るデジタルカメラやデバイス事業も順次分社する方針で、最終的には、本社には経営企画と研究開発部門だけが残る小さな本社を目指している。

各事業の分社は、意思決定の迅速化や他社との協業・事業統合の余地の拡大など、経営の効率化に寄与することが期待できる。実際、テレビ事業は収益面で分社の効果が顕在化している。

ただ、分社された事業の増益は、短期的には不採算部門のリストラによるところが大きい。つまり、売上と雇用の削減によって利益を確保するという縮小均衡の構図だ。

ソニーが縮小均衡を脱して、新たな成長軌道に乗るためには、ヒト、モノ、カネといった経営資源を事業の壁を越えて会社全体で最適化することが必要となる。収益を上げている事業の経営資源をその事業の中で再投資するだけでなく、新たな事業領域への投資に回さなければ企業全体の成長は望めない。

ソニーを始めとする日本の電機産業は、これまで、次々に新たな事業領域を開拓することで成長し、国内に雇用を創出してきた。このサイクルを復活させることができれば、日本の雇用環境の改善にもつながる。

ソニーの例でいえば、ゲーム、金融、映画・音楽などは比較的新しい事業であり、ソニーが成長を期待しているのもこの領域だ。しかし、これらは既に新規事業というよりは既存事業になっている。ソニーが成長するには、これらの事業が収益を上げている間に、さらに、その先の新たな事業領域を切り開く必要がある。

そのためには、ソニーが目指す「小さな本社」は、同時に、優れた経営判断と強力なリーダーシップを持った「賢い本社」でなくてはならない。

谷萩 祐之

著者情報:
谷萩 祐之

1958年生まれ、早稲田大学理工学部数学科卒。富士通株式会社でソフトウェア事業、マルチメディア事業、グローバル事業、コンサルティング事業を担当した後、現在、谷萩ビジネスコンサルティング代表。経営コンサルティングの傍ら、雑誌等で執筆活動を続ける。著書:「Webが変わる プッシュ型インターネット技術入門 」

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