Talk Genius

人と会社と組織を考えるニュースマガジン

サントリーがビームを買収、PMI人材のニーズは高まる

今日は大阪に出張しています。1年くらい前まではほぼ毎週大阪生活だったのですが、いくつか関西案件がクローズしたので、何だか久しぶりにこちらにやってきました。

昨晩のニュースですが、サントリーHDが米ウイスキー大手のビーム買収で合意、買収金額は1兆6500億円です。ビームといえばメーカーズマーク、僕はこのウィスキーが結構好きです。僕の周りはハーパーとシーバスリーガル愛飲者が多く、メーカーズマーク頼むと、「渋いねー」とか言われることが多いです。

サントリーは2009年にオランジーナ・シュウェップスを約3000億円で、昨年もGSKの飲料事業を約2100億円で買収しており、総額で2兆円以上をM&Aに突っ込んだ結果となります。また今回の買収金額はJTのギャラハー買収に匹敵する過去最大規模の買収になるようです。まさに大勝負です。

さて、このような買収の後には組織再編と業務統合=PMI(Post Merger Integration)と呼ばれるフェーズに進展します。今回はこのPMIと人材採用について考えてみようと思います。

今回のM&Aはサントリーにとっては1兆6500億円という物凄い金額の投資を伴っています。当然経営陣、従業員はこのM&Aの成功を信じている訳ですが、上手くいくかどうかは、買収後の新しい組織体制のもとで、いかに期待される効果を早期に生み出していくかにかかっています。しかしながら、現実には組織統合が上手くいかなかったり、被買収会社の核となる人材が流出したりと、期待どおりの効果が得られていないケースが多く見受けられます。

そのため通常このような大規模なディールに際しては、記者発表の数か月前の検討段階から、買収後のシナリオ作成、具体的には新体制移行のためのタイムラインや組織人事、買収効果を出すための事業編成の練り直し、業務の再設計などが特別なプロジェクトチームで進められています。
そして買収後は多くの場合、この検討チームのメンバーと事業部門の選抜チームがPMIのメンバーとして買収会社に送り込まれます。またコンサルティングファームにはこのPMIを専門とされるコンサルタントもおり、彼らと協業しながらPMIを進める会社もあります。恐らくサントリーからもオランジーナやGSK、そして今回のディールが成功したらビームにもPMI要員が派遣されるはずです。

以前大手の製薬メーカーのグローバル化をお手伝いしているときに、このPMIを主導できる人材のスカウトを依頼されたことがあります。同社は会社規模に比較すると駐在員数が非常に少なく、当然本社に海外事業を経験した人材が極端に少ない、しかし海外企業をM&Aして事業拡大を計画していました。製薬業界はファイザーやノバルティス、GSKなどM&Aで大きくなった会社が多く、経営陣の中には規模の競争にこのままでは乗り遅れてしまう、という危機感がありました。

私が依頼されたのは、人事や経理といった管理系人材のスカウトでした。人事系で振り返ると当時はビジョンやクレドといったものが流行っており、同社も例にもれず「○○ism」を買収会社にも浸透させたいという意図があり、M&A後に現地に人事系幹部として赴任し、人事制度の統合やグローバルに活躍できる幹部人材育成に力を入れたい、という希望がありました。一方経理は極めて本社は少人数でやりくりしており、そもそも買収会社の連結決算や本社側の管理会計に対応できる頭数が足りず、赴任要員を作るためにも人材を純増させたい意向がありました。

最終的には日系企業、外資系企業で国際間で人材交流を行っている所謂グローバルカンパニーから複数の方を採用されましたが、皆さん入社後数ヵ月後には人事のPMI要員として現地赴任されたり、海外子会社の経理を本社に巻き取って会計システムを再設計したり、広報・ブランディングルールを全世界で統一したり、等なかなかにチャレンジングな業務に就かれていました。

なお、当時はPMIなどを専門とするコンサル⇒事業会社という流れが一部ありましたが、最近は戦略コンサルというサービスが市場規模限界にきて売れなくなってきたのが理由か分かりませんが、とにかくコンサル出身者(コンサルもピンキリですが)が事業会社に増え、その中にはPMIの経験者もいたりすること、事業会社の経営企画部門などで会社統合などを経験した人材が増えたために、ある程度自社内の人材配置で対応できているようなお話も聞きます。

更に、その次のフェーズでは現地幹部のローカライズ(丸投げではない)を進めるべく、本社で外国人駐在要員を採用し、海外子会社マネジメントするような体制にシフトしている会社も増えています。
本日午前中に訪問した上場メーカーも一部の地域は本社から現地人社長を送り込んでマネジメントする体制を構築されていました。同社とは既に8年くらいの取引になりますが、当時は外国人正社員は2人⇒今は20名近くに増えている(本社700名程度、外国人社員比率は3%)というお話を聞きビックリしました。ポイントは単に現地人というだけではなく、日本企業でのマネジメントスキルを持っている人材であるということのようです。
ちなみに少し古いデータですが、2008年の「一部上場企業本社における外国人社員の活用実態に関するアンケート調査」では1社平均外国人社員の比率は0.26%でした。リーマンショック前のアンケートですので、現在は少しは数字は増えていると期待しています。

今年一発目のビッグディールはサントリーでした。今年はこのような大規模なM&Aのニュースも増えそうです。
人材マーケットでは「PMIできる人材」、「本社採用の外国人現地幹部」は一つホットなテーマになりそうです。


サントリー,M&A,買収,ビーム,PMI,ヘッドハンティング

三上 俊輔

著者情報:
三上 俊輔

2006年、早稲田大学法学部(専攻労働法)を卒業後、独立系エグゼクティブサーチ会社であるサーチファーム・ジャパン株式会社に入社。柔硬幅広い業界の部門長クラス以上の経営者獲得、スペシャリスト(エンジニア、会計士など)採用を実現。 2011年、サーチファーム・ジャパンより組織戦略及び技術コンサルティング事業を分社化し、ジーニアス設立、代表取締役就任。 理論と実践のギャップを埋め、健全なる雇用環境の発展に微力ながら貢献すべく、スカウトその他様々なプロジェクトを戦略的に遂行している。

この著者の記事を全て見る

Talk Geniusとは-

ヘッドハンティング会社のジーニアスが提供する人と会社と組織を考えるニュースマガジンです。