Talk Genius

人と会社と組織を考えるニュースマガジン

そうか、君は猟師になるのか

先日私の妻の友人がはるばる関西から遊びに来てくれました。
嫁ちゃんは来月出産予定でポンポコポン、なかなか遠出ができない中、たくさんの友達が訪ねてきてくれる、感謝です!

さて、そんな楽しい晩餐の中でビックリ発言が、なんと彼女は旦那さんに付き合って「自給自足生活を始めるかも!?」だそうです。
旦那さんは思うところ色々とあるようで、1次産業にチャレンジすることに備えて、色々と下見をされているとのこと。
しかも結構な山奥の過疎地を中心に検討されているそうで、生半可な覚悟じゃないんだな、ということが伝わりました。

僕は祖父母が定年後に北海道で畑やっていたのですが、自給自足ってわけではないので、本当の自給自足というものを上手くイメージできません。
「そうか農家かー、でも完全自給自足だと肉とかないから大変だね。時々ハムとか食べたくなるよねー」とかどうでもいいフリをしたのですが、そこで凄い答えが返ってきました。
「ハムもねー、できるんだよ。実は猟師の免許も取る予定なんだ。イノシシとかシカとか獲って燻製にしたらいいみたい」

!!!!

完全に「山賊ダイアリー」の世界です。なんと猟師免許を取るための勉強も開始、地域の猟友会の研修も受講を検討中なんだとか。
彼女曰く「日本のジビエはわざわざフランスから鴨輸入したりしているけど、実はそんな必要はないんだよ。日本にはイノシシもシカも鴨もいっぱいいる。それに鳥獣被害は物凄い額に上っているの。猟師が増えれば適性なバランスになるはずなんだけど。」
嫁ちゃんは呑気に「私たち弓道部だったからきっと狙うの上手いよね、ハム出来たら送ってくれ!」といってましたが、なかなか衝撃の夜でした。

今日はそんな「猟師になるんだ」発言に触発されて、日本の猟師の高齢化について調べてみました。
少し古いデータになりますが、年齢別狩猟免許取得者数の推移グラフがありました。
2010年ですが、日本全国の狩猟免許取得者は約19万人、1975年の約52万人から激減しています。
狩猟免許を持っている人が全員猟師ということはあり得ないので、本当に猟師として生計を立てていたり、自給自足生活している人はずっと少なくなります。
しかも興味深いのが年齢構成です。猟師の高齢化率は年々高まっており、2010年は全体の64%が60歳以上の高齢者層となっています。
次の20年を担うような40歳以下の若手猟師は1万2000人ばかりであり、なんと全体の6%しかいません。
猟師そのものが極めて希少な職業になることは間違いないように思われます。

一方で彼女が口にした鳥獣被害については毎年200億円以上となっているようです。
ちなみに2011年は226億円の内、シカ83億、イノシシ62億、サル16億、その他獣類23億、カラス22億、その他鳥類20億となっています。
獣類ではシカ、イノシシ、鳥類ではカラスがダントツに嫌われていることがよく分かりました。
山賊ダイアリーでも彼らはよくハンターに狩猟されていますねー。

猟師が流行らない理由を色々と考えたのですが、そもそも食生活に登場しないことが最大の理由のように思います。
我が家の食卓は豚50%、鶏30%、牛20%といった感じ、シカもイノシシもまず登場することはありません。
鴨南蛮は3ヶ月1回かな、牡丹鍋は年1回でいいよ、シカ・・・どうやって食べるんだろう、といった状態です。
ジビエは冬に神楽坂のカルネヤで美味しく年一度頂くくらいでいいじゃん、と思ってしまう自分がいます。
そう、猟師になっても、獲物が市場価値が付かず売れないのであれば、猟師のなり手は増えませんね。
加えて単に駆除・殺生するだけだと、なかなかそういった職業に就きたい若者も出てこない気がします。

ちなみに最近は猟師の第6次産業化を進めるプロジェクトも行われているようです。
農水省も岐阜県の猪鹿庁プロジェクトなどを取り上げています。この猪鹿庁のHPはなかなか秀逸だと感じました。
猪鹿庁長官の興膳健太さんは私のひとつ上で、岐阜県を巻き込んで狩猟を産業化する取組をされているようです。
捕獲~食品加工~販売までのバリューチェーンを構築する発想はなかなか面白いですね。

ちなみに「美人すぎる猟師」はまだ空席のようなので、彼女が猟師になった暁にはサクっとPRしたいと思います。

三上 俊輔

著者情報:
三上 俊輔

2006年、早稲田大学法学部(専攻労働法)を卒業後、独立系エグゼクティブサーチ会社であるサーチファーム・ジャパン株式会社に入社。柔硬幅広い業界の部門長クラス以上の経営者獲得、スペシャリスト(エンジニア、会計士など)採用を実現。 2011年、サーチファーム・ジャパンより組織戦略及び技術コンサルティング事業を分社化し、ジーニアス設立、代表取締役就任。 理論と実践のギャップを埋め、健全なる雇用環境の発展に微力ながら貢献すべく、スカウトその他様々なプロジェクトを戦略的に遂行している。

この著者の記事を全て見る

Talk Geniusとは-

ヘッドハンティング会社のジーニアスが提供する人と会社と組織を考えるニュースマガジンです。