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メリークリスマス、人材業界 2013年度の色々まとめ

メリークリスマス、皆様如何お過ごしでしょうか?

12月決算の会社さんは最後の売上を取りにひと踏ん張り、それ以外の会社さんは幸先良い年明けを迎えるべく、せっせとネタを仕込んでいらっしゃることだと思います。

今年も人材業界では色々なことが起こりましたが、個人的には東証さんスーパーウェルカムモードで上場増えたなーという印象です。人材業界でも製造業エンジニア派遣のアビストが12月18日にJQへ、販売員・オペレーター派遣のウィルグループが12月19日に二部へ新規上場しています。指定替えされた会社さんはWDB、キャリアデザインセンター、ディップなど結構一杯ありました。

またM&Aも結構活発に行われた様子で、3月のテンプホールディングスのインテリジェンス買収や、先日のJACのキャリアクロス買収、リクルートグループとエン・ジャパンはそれぞれ海外事業に積極投資を行っておりました。

そこで今日は人材業界の今年のニュース振り返ってみようと思います。

1.新規上場

2013年の新規上場は上述アビストとウィルグループの2社です。

アビストは沿革を拝見するとJBSHDからのスピンオフのようです。JBSHDはIT系の受託とSES派遣の会社ですが、製造業系は別会社化⇒スピンオフ⇒今年上場となったようです。ビジネスは関東、中部中心でお客様としては自動車メインなのかな?という印象です。
売上高4,720、営業利益651と健闘、ただこの領域はメイテック独り勝ち状態がほぼ確立してしまったので、ニッチに攻めようという方針でしょうか。

ウィルグループは正直名前見てもピンと来なかったのですが、セントメディアなどの親会社です。販売員・オペレーター派遣が中心、他にコールセンターなども運営されています。その昔は営業マンのハードワークが有名で戦闘メディアと揶揄されていましたが、そんなセントメディアが上場とあって隔世の感を覚えます。

売上高 営業利益 営業利益率
ウィル・グループ 22,174 618 2.8%
ヒト・コミュニケーションズ 20309 1670 8.2%

売上高は22,174、営業利益618、利益率3%切っているじゃありませんか!?とちょっと驚きました。ライバルのヒト・コミュニケーションズが売上20,309、営業利益1,670、利益率8%ですので利益率でダブルスコアつけられているわけです。
想像に易いのはヒトコムが元々流通大手の子会社分社化で誕生した会社(クライアントそもそも持っている)であったのに対して、ウィルグループは独立系ですのでイチから開拓しているので法人営業にコスト投下しないといけない、とかそんな感じでしょうか?

いずれにしても2社の皆様、新規上場おめでとうございます。

2.指定替え

こちらはいっぱいありますので、私の独断と偏見で一部割愛いたします。バイトルドットコムのディップ、R&Dの派遣・請負のWDBホールディングス、技術者派遣のトラスト・テック、@typeを運営するキャリアデザインセンター、販売員・オペレーター派遣のヒト・コミュニケーションズ、総合人材サービスのアウトソーシング、BPO・コールセンターのプレステージ・インターナショナルなどです。

いずれも特徴的なのは老舗企業が多い、ということでしょうか。昨年度のリブセンスのようにマザーズ⇒速攻一部へ指定替えという驚きはなく、ある意味では地力のある会社さんが順当に株主を増やして指定替えになったという印象です。

各社の今後の力の入れどころですが、ディップさんは上戸彩、いやメディカル領域ですね。現状はナース紹介事業は全国に5拠点展開、売上高1,370、営業利益▲590と真っ赤っかです。多分事業部長さんの首が飛ぶレベルです。このビジネスは選考するエスエムエス、追従するリクルートドクターズキャリア、マイナビ、専門特化型のメディウェル、メディカルコンシェルジュ、調剤子会社のメディカルリソース(日本調剤系)、アポプラスステーション(クオール系)などがありますが、そしてこのビジネスはなんといっても激しく売り手市場なので求職者集客に物凄いコストがかかります。
リスティング会社さんに聞くと「看護師 求人」はスーパービックワードで上限の9999円だとか、もはや正気の沙汰ではない金額です。但し、看護師の紹介手数料はそれ程高い訳でもなく(年収も紹介手数料率も高くない)、果たしてリスティングはROI高い行為なのか?首をかしげるレベルです。
但し大手は一度参入すると、ある程度体力勝負ができるので、勝つまで続けるという特徴があり、結局リクルートドクターズキャリアも2期連続で赤字を垂れ流しつつ事業を継続し、せっせと広告費用を積み上げています。

メディカル・介護領域は超売手市場のため、人材推薦すれば決まります。求職者と面談せずにメールのやり取りだけで推薦・内定となり、一度も顔も会わさない、電話も合計1時間も話さない、という人材紹介が横行しています。そのためかなりマッチング精度は低く、早期退職も多く、返戻金発生するので、更に1件1件に時間が取れない、というデッドスパイラルが展開されています。
個人的には、このようなビジネスは最終的には求職者の方のキャリアを傷つけるだけなのでは?と感じることも多く、各社ビジネスモデルどこかで変えないと生き残れないよ、と声高に叫びたい。5億の赤字を出しても事業を続けるディップさんは楽天リサーチ調べで顧客満足度NO1だとか、満足度って何ですか?っていう疑問はありますが、是非満足度を維持しながら黒転を達成頂きたいと思います。

キャリアデザインセンターさんは念願の1部指定替えですね。売上高5,108、営業利益500、メディアとしてはこんなもんでしょうか?
対前年比は売上、利益を含むすべての数字が成長、特に営業利益140%成長というのが嬉しいですね、良いタイミングの指定替えだと思います。成長のトリ ガーになったのはIT派遣事業、前年比170%成長、4月時点で損益分岐となる稼働スタッフ230名を超え、旺盛なIT系(WEB回り)の派遣ニーズを捕 まえたようです。


IT人材の派遣という点では当社もシニア活用.comという自社サイトを持っているのですが、立上げから派遣会社さんにはお世話になりました。今後はこの領域もメディカル同様に人材の確保が難しくなりそうです。そのため派遣会社もスタッフの抱え込みを強化するべく、スタッフの教育研修に力を入れていくのではないかと予想します。
現状はマネタイズまで考えない人もWEBプロデューサー、ディレクターと名乗っている訳ですが、今後はビジネスに精通しているわけではなく、サーバ周りも詳しくないし、HTML5もPHPもかけないと生き残ることが難しく、何となくのディレクターだったら手も動くよね?というニーズに変わりそうです。クリエイティブの方々のキャリア形成をどのように指南されるのか、気になるところではあります。

3.M&A、新規参入など

今年一番のニュースかもしれませんが、3月のテンプHDのインテリ買収には多くの方が関心を持たれたと思います。私はフジスタッフに人材ビジネスを売却して以降人材ビジネスにご無沙汰なソフトバンクグループがインテリを買うものだとばっかり思っていたので、ある意味で新鮮な印象を持ちました。
テンプHDはインテリジェンス以外にも積極的なM&Aを展開しており、3月にはパナソニックグループの設計受託企業を2社買収5月にはDRDという商用車開発の技術請負会社に出資して連結子会社化しています。DRDはUDトラックス(旧日産ディーゼル工業)の子会社です。この2社の買収はいずれもテンプが弱い技術系の派遣・請負を強化したい意向、メーカー側の懐事情が強く働いたのだと思います。なお、小さな買収だと8月にドコモサービスの事業譲渡が行われており、こちらは大手アカウントの商権獲得が目的のようです。うーむ、もはや全体像がつかめないので、組織構成図を張り付けておきます。

三上 俊輔

著者情報:
三上 俊輔

2006年、早稲田大学法学部(専攻労働法)を卒業後、独立系エグゼクティブサーチ会社であるサーチファーム・ジャパン株式会社に入社。柔硬幅広い業界の部門長クラス以上の経営者獲得、スペシャリスト(エンジニア、会計士など)採用を実現。 2011年、サーチファーム・ジャパンより組織戦略及び技術コンサルティング事業を分社化し、ジーニアス設立、代表取締役就任。 理論と実践のギャップを埋め、健全なる雇用環境の発展に微力ながら貢献すべく、スカウトその他様々なプロジェクトを戦略的に遂行している。

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