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ERPって何だろう? ERPパッケージの歴史、主要3社(SAP,Oracle,Microsoft)を比較しました。

1.はじめに

インターンの徐 奈英(ソ・ナヨン)と申します。
簡単に自己紹介をしますと、韓国出身の留学生で慶應義塾大学商学部の4年生に在籍しています。今年から就職活動が後ろ倒しになったため、現在は就職活動中です。自分のバックグラウンドを生かして、国際的なビジネスができる環境を希望し、外資系企業、総合商社や金融機関、グローバルに展開する製造業などに関心を持っています。この中で大体の会社は概ね7,8月に選考を行います。
多くの企業の経営を支える仕事がしたいと考え、一足先に就活がスタートしている外資系企業の中では、コンサルティングファームやERPパッケージベンダーを志望しておりました。そして、幸いに最近大手のERP会社から内定を頂くことが出来ました。文系の私はERPというサービスは就職活動を始めてから知ったものであり、自身が将来にキャリアを持つ業界として選択肢になった以上、このビジネスについて理解を深めるべきと考えて、当レポートを書くことに致しました。

この機会を通じて、ERPと代表的な企業の歴史などを調査・分析し、自身が将来進む道をより現実的に深く考えようと思います。

2.ERPとは何か

2-1.ERPの定義、主な会社

ERPとは、Enterprise Resource Planningの頭文字を取ったもので、日本語では、「統合基幹業務システム」や「統合業務パッケージ」と呼ばれています。企業の持つ様々な資源(人材、資金、設備、資材、情報など)を統合的に管理・配分し、業務の効率化や経営の全体最適を目指す仕組みを意味します。ERPは企業内の様々な部門の個別業務を効率化するためのシステムではなく、企業全体の経営管理の視点で「すべての業務を統合管理するための仕組み」です。そして、こうした仕組みを構築するために業務プロセスを標準化し、すべての業務、部門で1つのマスタを共有して、売上額などの数値を全社で常に1つの場所で管理する考え方を実現する大福帳型のデータベースを持つものがERPパッケージです。

では、ERPパッケージを提供している代表的な企業にはドイツのSAP社、米国のORACLE社, Microsoft社などの外資系企業が主流であり、日系企業ではNEC,ワークスアプリケーションズ,日立製作所などが挙げられます。

2-2.ERPの歴史

1970年代,80年代の企業情報システムは,処理能力当たりのハードウエアコストが非常に高価であり,企業内で業務処理をすべてカバーする情報管理が困難でした。1980年代までの企業情報システムの中心は,会計や給与計算といった必要不可欠なシステムから導入する部門最適型のシステムでした。その流れが大きく変わり,日本を含む世界中の多くの企業でERPパッケージが本格的に採用されるようになった一つのきっかけが,1990年代前半の欧米におけるBPR(Business Process Reengineering,業務プロセス改革)ブームです。BPRは競争力を高める新たな経営改革手法として注目され,多くの企業が部門最適型の業務プロセスからの脱却,全社レベルの抜本的なプロセスの再構築を進めました。
それから、ERPというものが1990年前半にSAPの「SAP R/3」を始めに存在感を増し、米Oracleの「Oracle Applications」などの各種ERPパッケージが発売されました。初期のERP市場はSAPとORACLEの2社によって成り立ったといっても過言ではありません。最初に世界的なリーディングカンパニーになったのはSAPであり、現在もERP市場でトップシェアを持っています。ORACLEの代表的な商品はERPアプリケーションの基盤となるデータベースですが、戦略的で積極的なM&Aを繰り返し、アプリケーションも提供できるようになりました。この2社は最初互いの商品を使う共存関係でありましたが、ORACLEが本格的にERP商品をローンチし、SAPのシェアを奪うようになってから、競合関係となっています。
MSは上記2社ほどERPに注力しているわけではなく、シェアはそれほど高くありませんが、Dynamicsシリーズの展開、最近は米国のSales Force 社のM&Aを検討するなど、未だ同領域高い関心を見せています。
現在、ERPの大企業普及率は欧米では7割以上、日本では4割以上であり、総合業務管理システムとして定着しています。

3.ERPパッケージ会社について

次にERPパッケージの代表的な企業3社をそれぞれ説明していきたいと思います。

3-1. SAP


SAPは、ドイツに本社を置くヨーロッパ最大のソフトウェア会社です。売上高は世界第4位、マイクロソフト、オラクル、IBM に次ぐERPのジャイアントです。特に大企業向けのエンタープライズソフトウェア市場においては圧倒的なシェアを持っています。SAPの製品は、ERPに代表されるビジネスアプリケーション群です。同社を世界的な企業に成長させたのはSAP R/3というERP製品であり、この製品のリリースを機に約10年間で売上高17倍に増加しています。最新版は2006年6月に出荷されたSAP ERP 6.0、近年新たに力を入れている商品はSAP HANAというシリーズであり、今年の2月にSAP HANA(S/4 HANA)という商品をリリースしています。

3-2.オラクル


オラクルはアメリカ系の企業で、1977年にラリー・エリソンにより設立されました。
民間法人や公的機関を対象とするビジネス用途に特化した世界第2位のソフトウェア会社です。オラクルの代表商品である「Oracle Database」は、世界市場のトップシェアを占めるデータベース管理システムソフトであり、ERP、CRM、SCMなどの注力製品として持っています。
ソフトウェアからミドル・ハードウェアまで全ての商品群が揃っていることが強みとして挙げられるオラクルですが、ERPなどの商品は積極的なM&Aによって自社プロダクトに取り入れ発展させています。代表的にはPeopleSoftやJD EdwardのようなERP、シーベルCRMなどを買収し、当社の商品ラインを拡充させたことがあります。
日本市場にも注力しており、日本法人は1985年設立、売上高1550億円、顧客数約28,000社、従業員約2500名、東証1部上場し、定着している外資系企業といえます。(2014年実績)

3-3.マイクロソフト


アメリカに本社を置く世界最大のコンピューター・ソフトウェア会社です。1975年4月4日にビル・ゲイツとポール・アレンらによって設立され、買収を通じてERP市場に参入しました。現在の最主力商品はMicrosoft Windowsオペレーティングシステムおよび生産性向上ソフトウェアのMicrosoft Officeシリーズであり、中で、Microsoft Dynamicsはマイクロソフト社製のERPソフトウェアパッケージのシリーズです。ユーザーは中小企業が中心です。特徴としてはOffice製品等、他のマイクロソフト製品との連携に優れているため、個々のユーザーが使いやすいように権限の範囲ないでパーソナライズできることです。



*IFRS: 国際財務報告基準
*ERPの世界シェア「Clash of the Titans 2014 P23」より

3-4.ERPのトレンドは今後どうなるか?

これまでERPの歴史や主力企業に関して述べましたが、最後にこれらの企業が見据える未来像について検討したいと思います。近年IT業界で最も注目を浴びる2つのトピックは「クラウドコンピューティング」と「モバイル」です。
まず、クラウドコンピューティングは様々な定義がありますが、ハードウェアやソフトウェアなどのリソースにオンデマンドに接続アクセスできることをいいます。クラウドERPは、インターネットをプラットフォームにするERPのことをいいます。
主な機能・メリットとは、①容量が大きいものも使いやすい ②高いセキュリティを元にどこでも簡単にシステムにアクセスできる ③企業が利用するソフトウェアを簡単に最適化・アップデートすることができる、などがあります。
一般的に、クラウドコンピューティングのうち、主にパッケージソフトウェアに提供するものをSaaSと呼びます。実際、SAP社では「The Cloud Company powered by SAP HANA」というメッセージが掲げられており、オラクル社ではOracle Cloudが事業セクションになるほど全面的に力を入れています。今後のERP商品もどんどんクラウド化させて定着させることが今後または現在のメイン戦略となっており、次々と関連商品も開発されています。そして、SAP社の2015Q3決算によると、クラウド部門の商品は131%も売上高が上昇し、導入実績も増えていることが伺われます。

モバイルとは、タブレッドなどの端末を通じていつどこからでも、タイムラグ無しで社内システムが利用できることを言います。このような機能によってグローバルでフレキシブルな働き方が実現され、ビジネスにおける時間空間のハードルは下がっていくだろうと期待できます。モバイルで使えるサービスを提供している企業はCISCOなどがありますが、今後モバイルを武器にERP市場に参入してくる可能性の高い企業としては、アップル社も多々挙げられています。現在はIphoneやIpadなどの商品をビジネス用で広げるため、業務用アプリケーションと共に多くの企業に提供している形態です。しかし、世界的な優位性を持つモバイル端末や、アプリケーションを用いるソフトウェアの強みから、端末と一体になるERPサービスなど、利便性に優れたものを開発するにつながるのではないかと期待できます。

一方、自社の強みを基盤に独自的なERPサービスを出して当市場に参入してくると予想される企業も存在し、グーグル社がその代表例です。グーグル社は2014年Google Expressという即日配達サービスを出しており、顧客からの受注、そして在庫管理と発送という一連のプロセスを管理するシステム、つまり企業の物流全体を統括するERPシステムが開発されるだろうと予想されています。特に当社は、『サテライトオフィス・クラウドCRM for Google Apps』のような、顧客関係管理(CRM:Customer Relationship Management)システムを既に保有しているため、上記のようなきっかけでERP市場へ本格的に参入することは自然な流れであると考えられます。

4.感想

最初はIT用語などが分からず、リサーチした資料を見てもあまり内容が理解できませんでした。しかし、だんだん調べていく中、幅広くスピーディーなテクノロジーの変化など、IT業界のダイナミックさが見えてきて楽しくレポートを作成することができました。
ITシステムが業務フローを効率化させると聞いていたことが、道具の一貫としてではなく、企業経営のインフラといえるほどの機能性を持つということにも驚きました。企業経営への支援がどのような方式で行われるのか少しイメージできるようになり、今後自身がITツールを通じて多くの企業をサポートすることも実現可能な目標であると確信出来ました。当業界で自身がやりたいことがもろにできると分かったので、今後もモチベーション高く頑張りたいと思いました。
今まで、いくつかのメーカーを調べてレポートを書き、大学で金融を専攻にしているため金融機関などを調べるなど、多くの企業の情報に触れてきました。しかし、今回のリサーチでまだまだ自身が知っているビジネスの世界は一部に過ぎないと実感しました。2016年の4月入社まで、偏見なく色んな業界を調べ、多くの社会人の方々にもお会いし、社会に対する理解を広げていきたく思います。

○参考文献
ZDNet JAPAN 「ERPを歴史的背景から見てみる」
http://japan.zdnet.com/article/20383682/
企業資源計画
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BC%81%E6%A5%AD%E8%B3%87%E6%BA%90%E8%A8%88%E7%94%BB
ITmedia エンタープライズ「5分で絶対に分かるERP」
http://www.itmedia.co.jp/im/articles/0708/31/news135.html
SAP「SAP: Run Simple – The World’s Largest
Provider of Enterprise Application Software」
http://www.sap.com/bin/sapcom/en_us/downloadasset.2015-04-apr-21-01.SAP-Corporate-Fact-Sheet-en-20150421-pdf.bypassReg.html
オラクル
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AA%E3%83%A9%E3%82%AF%E3%83%AB_(%E4%BC%81%E6%A5%AD)
SAP IR
http://global.sap.com/corporate-en/investors/newsandreports/news.epx?articleID=24389&category=45
ORACLE IR
http://investor.oracle.com/files/doc_financials/3QY15/3q15-pressrelease-March_v001_e7v93w.pdf
MS IR
https://www.microsoft.com/investor/EarningsAndFinancials/Earnings/PressReleaseAndWebcast/FY15/Q3/default.aspx

ZDNet JAPAN「クラウドERPを拡充、国内で本格展開へ–日本オラクル」
http://japan.zdnet.com/article/35059504/?tag=mcol;relArticles
ITpro by日経コンピュータ
http://itpro.nikkeibp.co.jp/atcl/column/14/346926/021300166/
ITメディアエンタープライズ「クラウドコンピューティングに見るERPの将来像」
http://www.itmedia.co.jp/enterprise/articles/0809/16/news012.html

 (分析者: 徐 奈英 レポート第2弾 「サムスン電子  決算分析~2015年Q1決算は復調傾向、平均年収は1108万円~」 はこちら

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徐奈英

著者情報:
徐奈英

慶應義塾大学商学部インターン2期生。出身は韓国、日本語を上達させながら専攻の勉強もしたいと考え、大学から日本に留学。在学中は国際交流サークルやNPO法人、ボランティア等、多くの活動に主体的に参加している。就職活動を前に日々、幅広い業界の理解を深めつつ、実務的な業務を行っている。

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