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人工知能が人材紹介業にもたらす未来~人工知能との付き合い方~ ①

1.はじめに

ジーニアスインターン生の高坂将大(こうさかしょうた)と申します。
7月末からジーニアスにてお世話になっておりましたが、2月をもって卒業させて頂くことになりました。そこで今回、最後のレポートとして人材紹介と人工知能について書かせて頂きたいと思います。

最近「人工知能が既存業務に与える影響は!?」「人間の仕事は奪われる!?」といった記事をよく見ますが、「そもそも人工知能ってなんだ?」「なぜ注目されている?」「人材紹介に与える影響は?」ということを感じていました。そこで今回、「人工知能」という言葉と技術を整理するとともに、それが人材紹介にどう適用されるか、そして人材紹介会社のあり方を考察します。
また、人工知能について自分なりに勉強をしましたが、間違った表現や勘違いをしている場合はご指摘を頂きたいです。3章は人工知能について書いているので、「もうこんなの知ってるよ!」という方は4章「人材紹介における人工知能の適用」からご覧ください。

また、人材紹介と人工知能についてTalentBaseを提供している株式会社アトラエ取締役の岡利幸様、株式会社JACリクルートメントの佐藤優一様にインタビューをさせて頂きました。この場を借りて御礼申し上げます。(人工知能を勉強し整理するに辺り、主に東京大学大学院准教授である松尾豊教授の著書[1]や講演資料[7]を参考にさせて頂きました。)

2.各章のポイント

3.人工知能(AI)の現在
3-1.人工知能とは?
【専門家の間でも定義は様々・・・】

3-2.人工知能の発展
【機械自ら特徴量の設計を出来るようになったことがAIブームの引き金に!】

4.人材紹介における人工知能の適用
4-1.従来の機械学習による人材紹介
【従来の機械学習では特徴量の設計、マッチング精度に限界がある】

4-2.ディープラーニングがもたらす人材紹介
【業務効率向上~人工知能によるマッチングまで、可能性は無限大!?】

5.人材紹介会社のあり方
5-1.人材紹介会社の提供価値
【当事者が得られない情報の提供、新たな気付きの提供】

5-2.人材紹介会社における人間と人工知能の役割
【人間は創造的な仕事で提供価値の向上を、人工知能は業務の最適化・効率化を】

3.人工知能(AI)の現在

3-1. 人工知能とは?

専門家の間でも定義は様々・・・

最近、人工知能(AI)は「機械学習」や「ディープラーニング」という言葉と共にニュースや記事で取り上げられています。
イメージとしては、「人間が考えて行動することを機械が同じように行うため、人間は知能があると感じる」といったとこでしょうか。具体的には、通販サイトの「あなたにはこの商品がオススメ!」といったレコメンドシステムや自動運転、Pepperなどがあります。

では、そもそも人工知能とはなんでしょうか。その定義は研究者により様々です。 [1]に記載されているものを一部引用します。
ここで伝えたい事は、専門家の間でも人工知能の定義は様々であるということです。よってここでは人工知能をあえて定義せず、全体的なイメージを掴んだ上で進んでいきたいと思います。

中島秀之
公立はこだて未来大学学長
人工的につくられた、知能を持つ実態。あるいはそれをつくろうとすることによって知識自体を研究する分野である。
西田豊明
京都大学大学院情報学研究科教授
「知能を持つメカ」ないしは「心をもつメカ」である
溝口理一郎
北陸先端科学技術大学院大学教授
人工的につくった知的な振る舞いをする「システム」である
長尾真
京都大学名誉教授 全国立国会図書館長
人間の頭脳活動を極限までシュミレートするシステムである
堀浩一
東京大学大学院工学系研究科教授
人工的につくる新しい知能の世界である
松尾豊
東京大学大学院工学系研究科准教授
人工的につくられた人間のような知能、ないしはそれをつくる技術

3-2. 人工知能の発展

機械自ら特徴量の設計を出来るようになったことがAIブームの引き金に!

人工知能という言葉は最近良く聞くようになりましたが、実は1950年代から人工知能という言葉は使われ、研究されてきました。
以下に技術進化を基に時代を分け、発展経過をまとめます。

ここでは③機械学習の活用と④ディープラーニングの研究について説明します。
(①,②については補足的な知識のため、末尾の付録にまとめてあります。気になる方はご覧ください。)

  1. 3機械学習の活用

    • 機械学習の概要

      現在、機械学習という技術が人工知能と言われ、ビジネスでも多く使われているのではないでしょうか。
      では機械学習とは何か。まず「学習」とは知識を基に、物事を分けることです。例えば人間がある動物を見た時、小さくてニャーと泣いて、しっぽが長いという特徴があったとしたら、猫とわかります。
      これは、猫はしっぽが長いなどの特徴を「知識」として持っており、これを基に他の動物と猫を分けており、猫を判断する学習をしています。機械学習もこれと同じプロセスを踏みます。「機械学習」とは、与えられたデータ(知識)を基に、物事を分けるための判断ルールを生成する技術です。猫の例で表すと、機械に動物の写真を大量に与え、猫を認識するため猫のどの特徴に着目するか人間が設計し、猫を他の動物と判断するための重み付けを計算し、判断ルールを自ら生成します。そうすることで機械は猫を判断できるように学習します。

      他の例として、通販サイトのレコメンド機能があります。通販サイトは顧客が購入した商品の特徴を抽出し、そのデータを集め「この人はこの特徴からこういったものを欲しがる傾向にある」ということを予測し、推薦します。
      例えば、村上春樹の本を大量に購入している人は「ジャンルは本、著者は村上春樹」という特徴があり、「村上春樹の本を欲しがる」という予測をし、村上春樹の新刊を薦めるといった具合です。

      要するに機械は与えられた顧客の購入データを基に、顧客が欲しがる物を判断するルールを生成し、学習します。

    • 機械学習における重要な点

      機械学習の重要な点としては、データが多ければ多いほど、精度は高まっていくという点があります。猫の例だと、様々な種類の猫や様々なポーズをとっている猫の画像を与えることで、判断できる猫の幅は広がります。
      また通販サイトの例だと、顧客が商品を買えば買うほど、顧客の特徴を学習し、レコメンドする商品の精度は高まります。よって与えるデータ量が重要ということになります。また、機械学習において重要な点として「特徴量」というものがあります。猫の例だと「鳴き声、しっぽ」、レコメンドの例だと「ジャンル、著者」などの特徴を一般的に「特徴量」と言います。機械学習はこの特徴量を人間が設定し、データを与えることで、物事を予測したり分類したりします。よって特徴量の設計によって、精度は大きく変わってきます。
      例えば、年収を予測する時にその人の好きな色や好きな食べ物を特徴量としても全く意味ありません。仕事内容や役職を特徴量として設定するべきです。よってデータ量と同様に特徴量の設計も重要であるといえます。

  • 機械学習における課題

    しかしこの特徴量には課題があります。あくまで特徴量は人間が設計しなければならないという課題です。猫の例で言うと、「人間は猫を判断する時、しっぽ、鳴き声、大きさなどを基に判断するだろう。じゃあ機械はこれらに着目するように特徴量を設定しておけば、機械も判断できるようになるだろう。」という思考の基に設計を行います。よって機械は何も理解はしていません。あくまで設計された各特徴量がどれだけ重要かを重み付けし、その重み付けに従って与えられたデータを処理します。そして現在、この特徴量の設計が機械自ら行うことが出来るようになりつつあります。
    それがディープラーニングという技術です。またこの技術こそ、現在の人工知能ブームの引き金となっております。

  1. 4ディープラーニングの研究

  • ディープラーニングの概要

    ディープラーニングは機械学習の技術の一種であり、ニューラルネットワークを何層にも重ねることで、人間が物事を認識するのと同じようなことを実現しようとする技術です。ニューラルネットワークとは人間の脳神経回路をまねすることによってデータを分類しようというアイディア技術です(詳細な説明は長くなるため省略します)。
    具体的なイメージは以下の図です。例えば、赤ちゃんが最初に猫を見た時、「目」「耳」「しっぽ」などの特徴を学習し、猫を判断するルールができ、猫の概念を学習します。そしてその概念を「猫」という言葉と紐づけることで、猫を認識出来るようになります。
    ディープラーニングも赤ちゃんと同じで、機械自ら特徴を学習し、判断するルールができ、認識が出来るようになります。このディープラーニングの技術を用いた有名な例として、「Googleの猫の認識」があります。Youtubeから1000万枚の画像を取り出してこれらを入力とし学習させると、以下のように特徴量が抽出されました。
    ([7]より引用)

    丸と線で繋がれたものがニューラルネットワークと言われるものです。
    この左側ほど小さな特徴(点や斜線など)を抽出し、右側ほど特徴が組み合わさり複雑な特徴を抽出しています。これを見ると「人間の顔のような特徴」や「猫の顔のような特徴」を抽出していることがわかります。よってこの機械は1000万枚の画像から自動的に人間の顔や猫の顔など様々な物体の特徴を抽出することが出来ていることがわかります。

  • ディープラーニングにおいて重要な点

    ディープラーニングは「特徴量の設計」を機械自ら行うことが出来るため、データの量と設計が重要となります。
    ディープラーニングは人工知能にデータを与え、特徴量を自ら学習します。ということはこの与えるデータ次第で特徴量の抽出は変わってくるということです。
    上記の「Googleの猫の認識」の例でも1000万枚の画像を使用しているため、相当なデータ量が必要なのがわかります。また、いくらデータを集めてもそのデータに偏りがあっては意味がないため、あらゆるパターンを網羅したデータを設計(どういうデータを与えるか)する必要があります。例えば、猫の正面からの写真だけでは横顔は判断出来ないため、様々な角度やポーズの写真が必要といったイメージです(しかしこの網羅したデータというのも、パターンは無限に存在するため「これらのデータを与えれば網羅する」と判断する基準を考えるのは難しい)。

    >>次のページは、【人材紹介における人工知能の適用】について

    【2ページ目】4.人材紹介における人工知能の適用
    【3ページ目】5.人材紹介会社のあり方/6.ジーニアスインターンを振り返って/参考文献/付録

高坂将大

著者情報:
高坂将大

1994年東京都生まれ。早稲田大学創造理工学部インターン3期生。4月から人材会社に就職予定のため、入社までに人材業界の心得や実務を経験したいと思い、2015年7月からジーニアスに飛び込む。将来的には求職者側と企業側の双方から信頼されるキャリアコンサルタントになりたいと考えている。

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