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目標2千人→実績1人…厚労省、転職支援でずさん助成金

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定年を控えた高年齢者を雇った企業にお金を出す厚生労働省の助成金で、2013年度の実績が2千人の目標に対し、わずか1人だったことがわかった。関連事業も含め約70億円の予算の99%が余ったが、今年度は予算を84億円に増やした。成長戦略で高齢者雇用に力を入れているためだが、過大な見積もりを前提とした「お手盛り」予算として批判を浴びそうだ。(朝日新聞デジタル 6月15日)

政府の高齢者雇用補助金にはさまざまあるが、どれも実質的な効果を上げることがなかなかできない。そのひとつが、朝日新聞で指摘された「高年齢者雇用安定助成金」だ。
この制度は、職業紹介会社を通じて定年を控えた転職者を1人採用ごとに、採用企業に70万円を補助するというもの。しかし記事によると2025人分の利用想定に対し、実績はわずか1人だったという。総予算70億円のうち、実際に利用されたのは約4000万円。実に99%が使われずに残ったのである。
記事では、事業を担当する厚労省高齢者雇用対策課は「類似の助成金を参考にして予算を組んだが、初年度ということもあり、PR不足だった」と釈明している。

たしかにPR不足の感は否めないが、広報予算そのものが限られている中で、他の優先案件があれば、ある程度は仕方がなかったのかもしれない。
しかし、そもそもこれら政府の補助金制度の多くは、簡単に使えない、使いにくい、という評判がもっぱらだ。準備する書類が多岐にわたり、特別の書式なので作成も大変、手続きそのものも煩雑で、なかなか届け出るまでの敷居が高い。まるで、「あまり申請するな」といっているのではないかと勘ぐりたくなるほどだという。

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そこで、こうした申請手続きを代行してくれる専門業者を利用するのもひとつの手だ。
たとえばシニア活用.comのコラム「65歳雇用延長を迎えて」では、社会保険労務士の横井祐氏が、同制度の特徴や申請方法を解説してくれている。
この制度を利用したいと考えている方は、大いに参考になることだろう。

ただし注意点をひとつ。補助金や助成金とは、基本的には返済の必要ない、言うならば「もらえるお金」である。すると悲しいかな、人間の性(さが)として、決して有効には使われない、という傾向がなきにしもあらず、なのである。
高齢者を活用することは、高齢者本人の生きがいにつながるだけでなく、長年にわたって培われた経験や知識は、それぞれの企業の業務にも大いに資するはずだ。“高齢者の活用こそ、業務の維持発展に不可欠”、そんなスタンスでこの「高年齢者雇用安定助成金」の活用が広まればよいのに、と強く思う。

著者情報:
井手 和明

1954年生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。雑誌編集者を経て、フリーランスの編集ライターに。以降、紙、デジタルにわたって、IT、Web、経営・経済・歴史、社会学、心理学など多方面にわたるコンテンツのプランニング・制作・編集ライティングに携わる。ネットショッピング、ウェブマーケティング、ITトレンド、歴史、心理学、健康などに関する多くの著作あり。

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