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Google For JobsはIndeedや求人媒体を殺すのか?

googolejobs

Google For Jobsの日本語サービス(Googleしごと検索)が開始しましたね

皆さまお待ちかねのGFJが日本上陸しましたね。巷では対Indeed、対優良求人媒体、対人材紹介など色んな議論があります。結論から言うと、私は「短期的にそこまで大きな変化ないよ、長期的にはセルフ化が加速するよ」という「何ともお前…」な帰結に至っております。

いきなりアグリゲーション商売がエンドを取りに行くにはコンテンツプアすぎて日本人には刺さりにくいです。またそもそもGoogleにとっての栄養分をいきなり殺しに行く必要性がありません。ゆっくりと骨の髄まで吸い尽くし、そしてジワジワ締め上げるのが彼らの得意技です。

本件は人材ビジネスの最深部のプラットホームを誰が取るのか?という視点で見るととても面白いのですが、マネタイズに目を移すとGFJがIndeedや転職サイト、人材紹介会社を殺しに行く意味はゼロということに気が付きます。GFJの広告収入源はIndeedや媒体運営会社、紹介会社の集客予算なのです。

これまで紹介会社の集客予算はテレビCM、交通広告、Googleのリスティング、Indeedの上位表示広告費用、じげんやキャリアインデックスなどのアグリゲーション、個人を含むアフィリエイター向けに振り分けられていました。これらが今度はGoogleにより多く投下される可能性が増えますが、ストラクチャーに大きな変化はありません。

しかし直接採用企業の求人しかGoogleは検索結果に表示しない!という大英断を下すと、かなり異なるストーリーになります。(現状はそんなことはなかったのですが。)

Google For Jobs 検索結果画面例

Google Jobs 検索結果画面例

エンド(求職者)のUXは変化するのか?

求職者が求人検索するとき、1次GFJ→2次Indeed/求人媒体/紹介会社/求人企業→3次求人企業(公開・匿名)にエントリーとなるのか、そもそも1次GFJはSkipして最初から2次の経路となります。

これはお買い物するときに、Googleで検索するのか、最初からAmazonやZOZOを使うのか?という消費行動と同様です。目的が明確で認知の高いエンド向けサービスがあり、グリップが強い場合、検索プラットホームの影響はそこまで大きくなりません。

現状各求人媒体とGFJを比較する場合、まだ日本語最適化などはGFJは不明な部分が多く、既に最適化されたサービスの流入には寄与するでしょうが、消費者行動を劇的に変えることは難しいと思います。地図情報を活用した販促系サービスが日本ではほぼ機能していないのと同じ現象が繰り返される可能性が高いです。

但し、専門職種や地域限定求人(バイト・パート領域)については変化があると思います。これらは現状リクナビやマイナビというよりタウンワークやアイデム、ディップのバイトルなどの食い扶持です。

ドライバー、医療事務、コールセンターのアポインター、飲食、看護師など時給やロケーションで職場を選ぶ傾向の強い職種は、Indeedの掲載効果が高く直接求人の恩恵を受けており、この領域はGFJが市場を大きく伸ばすとともに、媒体を介さない直接採用が主流になる可能性が高いです。

これらの領域の広告媒体はどちらかというと低価格帯と成功報酬という波に飲み込まれていくトレンドにあり、中長期的には採用ブランディングに近しいフィールドを開拓していかないと生存は難しくなると考えています。

なお、GFJに直接出稿または自社WEBサイトの求人ページがクローリング対象となる求人企業にももちろん反響はあります。最もこれらの企業は、現在でも採用広報に力を入れている企業、これらの企業は須らくリファラルやダイレクトリクルーティングも積極的であり、採用予算も盛り盛りで、媒体も紹介もチャネルは問わず採用活動に勤しんでいます。GFJはそのチャネルが一つ増えるくらいの認識でしょう。

それではどこに影響が出るのか? 採用のセルフ化

GFJやIndeedなど所謂アグリケーションサービスに直接出稿し、それなりの投資回収ができることが立証されると、これまでの採用予算(広告・紹介)がいかに割高のサービスであったかが判明します。

これはコンビニコーヒーvsスタバなどと同じ構図であり、元来原価が極めて安いコーヒーをスタバはじめとするカフェチェーンはかなりの暴利を取って消費者に販売してきたのですが、コンビニのセルフに置き換わると値段半分でもそこそこ満足でき、販売側も利益出てマネタイズできている(私はアンチスタバではないですよ。)ような現象が、人材ビジネスでも発生します。

人材業界では採用の外注化(求人媒体、人材紹介)→セルフ化(ダイレクトリクルーティング、RPO)の大きなトレンドがあり、GFJがあってもなくても飲み込まれる未来にはあるのですが、GFJは求人広告無料か低コスト化というこれまで開かずの扉を大規模開放することになるので、その飲み込む速度をかなり早くする効果があります。

採用のセルフ化の中で、有料求人広告ビジネスはGFJにプライシングを引きずられ低価格化または成功報酬への切り替えするのか、wantedlyのようなどちらかというと採用広報・ブランディング方面に舵を切るのか?という判断を迫られます。まぁ、wantedlyもFacebookForJobsが出るとかなりきついのですが。

また人材紹介は、ジョブ型職種の紹介がセルフ化で徐々に切り取られて、ニッチに行くか、ハイエンドに行くか、またはRPOにシフトして採用業務の工数を取りに行くのか?という判断に迫られます。

人材業界の各企業は「セルフ化」にどのように向き合うのか?が未来を決めます。
マクロトレンドから見ても、2010年くらいから続く春夏が終わり、冬支度必須ですが、長尺ではセルフ化による事業消滅に対する環境適応が試されます。

三上 俊輔

著者情報:
三上 俊輔

2006年、早稲田大学法学部(専攻労働法)を卒業後、独立系エグゼクティブサーチ会社であるサーチファーム・ジャパン株式会社に入社。柔硬幅広い業界の部門長クラス以上の経営者獲得、スペシャリスト(エンジニア、会計士など)採用を実現。 2011年、サーチファーム・ジャパンより組織戦略及び技術コンサルティング事業を分社化し、ジーニアス設立、代表取締役就任。 理論と実践のギャップを埋め、健全なる雇用環境の発展に微力ながら貢献すべく、スカウトその他様々なプロジェクトを戦略的に遂行している。

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