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リクルートのglassdoor買収に関して

Glassdoor

リクルート、米グラスドアを買収 ネット求人大手 ビッグデータで人材事業の成長加速(日経)
リクルートホールディングスは米国のネット求人サービス大手グラスドア(カリフォルニア州)を、12億ドル(約1300億円)で買収する。グラスドアは社員や求職者から集めた膨大な企業の口コミ情報を持つ。ビッグデータ分析と人材紹介事業を組み合わせ、成長に弾みをつける。

リクルートがglassdoorを買収した。買収価格は1300億円、掲載企業数は77万社、1社あたりのクチコミ価値は1300億円/77万社で168,831円(約17万円)となる。

MSがLinkedinを買収したときと比較すると、4.33億人強の個人情報の価値は262億ドルで買収し、60.50ドル(6500円)だったので、ざっくり世の中で求職者情報は6500円、求人企業口コミ情報は17万円くらいの価値があるんだなーということが感じられる。リブセンスやVolkersの企業価値にも少々影響が出るかもしれない。

glassdoorは現状赤字ではあるものの、毎年収益規模を伸ばしており、リーンで1位以外はなかなか食っていけない口コミ商売においては先行投資やむなし、良い意味での赤字先行型の事業経営をされていたと思われる。

リクルートの狙いはいくつかあると思うが、短期的にはIndeedとのクロスが興味深い。glassdoorとIndeedに相互広告を載せてグルグル回すだけで、それなりの求職者情報とトラフィックが確保されるはずだ。

実質的にIndeedは求人検索といっても、あの大量の情報の中で適切な求人を見つけ出すことは不可能なので、glassdoorで気になる企業を確認し、同社の掲載求人にIndeedからエントリーするような目論見が一つあると考えられる。また両サイトの求職者の回遊時間が長ければ長いほど、転職市場におけるリクルートの支配時間シェアが高まる。

もう一つは英語圏における面取り合戦における攻めの打ち手であろう。アデコ、ランスタッドというHRの同業というより、Googleなどのプラットフォーマーに対して、認知度の高いサービスを予め抑えることで浸食を防ぐ意味合いが大きいはずだ。

なお、グローバルのHRカンパニーの近年の事業形態の推移で興味深いのは、リクルートはテックに相当に舵を切り、その一方でアデコやランスタッドは猛烈に紹介事業に注力している点だ。

HRのラストワンマイルの巨人になるのか?(紹介・派遣)
それとも入り口の面をとるプラットフォーマーになるのか?(媒体・テック)
双方戦略が異なるために、結果的に打ち手も変わるわけだ。

ひょっとすると既に「HRのラストワンマイルを巡る攻防」からはリクルートキャリアは離脱し、マッチングAIの情報収集機能と化しつつあるのかもしれない。労働集約から鮮やかな業態転換を実現しつつあり、投資家目線ではナイスディールであるものの、そこで働く個人(特にハイグロ以外のスキルマッチング系のRA,CA)には少なからず憐憫の情を感じざるを得ない。

三上 俊輔

著者情報:
三上 俊輔

2006年、早稲田大学法学部(専攻労働法)を卒業後、独立系エグゼクティブサーチ会社であるサーチファーム・ジャパン株式会社に入社。柔硬幅広い業界の部門長クラス以上の経営者獲得、スペシャリスト(エンジニア、会計士など)採用を実現。 2011年、サーチファーム・ジャパンより組織戦略及び技術コンサルティング事業を分社化し、ジーニアス設立、代表取締役就任。 理論と実践のギャップを埋め、健全なる雇用環境の発展に微力ながら貢献すべく、スカウトその他様々なプロジェクトを戦略的に遂行している。

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