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この春から人材ビジネスを始めた君へ

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街を歩くと初々しいリクルートスーツに身を包んだフレッシュマンをたくさん見かけますね。
そうか、4月ですからいよいよ人材業界にも新人君がたくさん入ってきたのだなーと実感しています。

さて、気の早い会社(どことは言いませんが)は早速新人研修と称して飛び込み営業をやっており、当社にも何人かやってきました。
そもそも半蔵門なんて辺鄙な場所のビルの10階の奥のオフィスなんて物好きも多いんだなーと思って、「どうしてここに来たの?」と聞いたら、「この地域担当になったので、すべての会社を回っています」という返事がありました。
そんなわけで今日は「この春から人材ビジネスを始めた新人さんへ」メッセージを書きたいと思います。もう少し厳密にいうと「人材紹介業」の新入社員さん向けとなります。偉そうに・・・諸先輩方すいません。

1.地道な努力の積み重ねが、信頼を生みます。

昔から言われていることですが、「毎日の0.01の努力」をするのかしないのかで、1年後の状況は全然違います。
「1.01の365乗は37.783、0.99の365乗は0.025」、わずか0.01ですがその差は物凄く大きいのです。

人材紹介業で成功をどのように定義するかは議論の余地はあると思いますが、私は多くのクライアント、キャンディデイトに喜ばれる仕事・成果を出すこと、そしてそれを長期間継続すること」だと考えています。
人材紹介業のビジネスプロセスのゴールは「キャンディデイトの転職の成功」そして「クライアントでの定着化と活躍」の2つです。

多くの人材紹介会社では「入社=売上」でこれをゴール・成果として捉えている傾向が強いのですが、転職先で定着し活躍しているところまで見届けてこそプロフェッショナルの仕事です。
決して自社・自分の売上に繋がるから(予算達成)という安直な理由で、何が何でも転職を勧めて、キャンディデイトの人生を狂わせないでください。
このようなブローカーチックなコンサルタントや、そういったコンサルタントを量産している企業も残念ながら存在しますが、このような仕事ぶりではクライアントからもキャンディデイトからも信頼は得られず、一時的には成果は上がりますが、継続することは不可能です。
できれば、入社後1年以内の早期退職率を3%以内に抑えることを心掛けてください。またリテイナーファームであれば契約期間内の成功率を80%以上を目標として下さい。

成功しているコンサルタントは、絶え間なくクライアントやキャンディデイトからの案件や優秀なご友人の紹介によって継続的に成果を出しています。一度だけではなく、クライアントから次も一緒に仕事がしたい、キャンディデイトからは大切な友人の人生をこのコンサルタントにサポートしてもらいたいと期待を集めている方が凄く多いです。
そして、常にクライアント・キャンディデイトファーストの姿勢を貫いて下さい。成功しているコンサルタントはいつでもクライアント、キャンディデイトからの連絡に対応しています。休みの日は普段忙しい方々とゆっくり時間を取ってお話ができるので、平日よりもむしろ仕事をしている方が多いと思います。(仕事と私生活を大いに混同できる方の方がこの仕事は向いているのかもしれません。)

どうしてかって? あなたの代わりはいくらでもいるからです。
だからこそ、地道な努力の積み重ね、信頼を獲得しなくては成功できないのです。

2.人材紹介会社は営利法人で、コンサルタントとは営業職です。

先ほどまで目の前の売上に固執して他人様の人生を惑わせちゃいけない、なんてことを語っておいて矛盾しているじゃないか?と思われるかもしれませんが、これも重要なことです。
人材紹介会社は営利法人で、コンサルタントとは営業職です。
人材紹介会社は売上が上がらなければ倒産してしまいますし、売上ゼロのコンサルタントは会社にいてもらっては困ります。売上ゼロのコンサルタントというのは、クライアントからもキャンディデイトからも必要とされていない人だということです。
一時的に売上を上げても長続きしない人もここに含まれます。

さて、これから働き始めると徐々に実感してくると思うのですが、コンサルタントの日々の行動の中でプロフィットを生んでいる時間は、クライアントと商談しているときと、キャンディデイトと面談しているときの2つだけです。
それ以外は、はっきり言うと何のプロフィットも生んでいません。提案書を作っていようが、マッチングしていようが、とにかくプロフィットを生んでいないのです。
ではプロフィットを生み続けるにはどうしたらよいか? それはプロフィットを生む2つの時間をできるだけ増やすことしかありません。
成功しているコンサルタントは1ヵ月にクライアントとの商談やキャンディデイトとのインタビュー、面接の同席など様々な予定があり、100件程度のアポイントがあります。まずはその数字を目指してください。

また、追い打ちをかけるようで申し訳ないのですが、人材紹介業というのは、実は非常に厳しい商売です。
コンサルタントにはクライアントのオファーレターを出す権限もありませんし、キャンディデイトの入社承諾の意思表示をする権限もありません。
要するに1つのディールをまとめるのに必要な権限は何一つ持っていないのに、売上は上げないといけないという宿命があるのです。
そのため、入社してからの1,2年は大変な努力をしたところで報われないことが多く、大いに悩むときがやってくると思います。

そんな時のために予め認識しておいてください。
人材紹介会社は営利法人で、コンサルタントとは営業職です。

3.主役は「人材」であるということ

人材紹介業の社会的存在価値とは何か? 3年以上この仕事を続けると、必ず深く考えるときがやってきます。
そんな時に思い出して頂きたいのが、人材紹介業というのは非常に公共性の高い仕事であり、主役は「人材」でなくてはいけない、ということです。またキャリアコンサルタントと名乗る以上は、キャリアコンサルティングすることが使命だということです。

人材紹介業の起源は諸説ありますが、江戸時代の「口入屋、桂庵」とする説が一般的です。調べると中々に味わい深い、ややもするとイメージの悪い言葉に感じるかもしれません。
この口入屋は、お客様に代わって労務管理を引き受けること、求職者と求人企業を結び付ける機能を有しており、現在の人材紹介・派遣会社に近いビジネスであったことが想像されます。
但し、長い歴史の中では、「あゝ野麦峠」や「女工哀史」に代表される悲劇を生みだした張本人であった時代もあります。
口入屋の時代は「人材=労働者」は労働力でしかなく、そこには個性は存在しませんでした。まさにモダン・タイムスにおける「機械の一部、部品」として人材が取り扱われていたのです。
そして紆余曲折を経て、厚労省の許認可事業である「人材紹介業」として現在に至っているのです。

人材紹介業の主役は文字通り「人材」です。
多くの新入社員の方が、仕事をしていく中で、「実は人材紹介業のビジネスモデルって、求人案件と求職者のマッチング数のトラフィックを最大化したら成約も多いし、売上も上がるし、個人評価も高くなるじゃん!」というシンプルな構造に気が付くと思います。
そしてよくよく隣の先輩の仕事の進め方を見てみると、「キャンディデイトには何でも良いので多くの案件に応募させよう」、「キャリアコンサルティングの時間はできるだけ短縮、というかやらなくてもいい」、「クライアントの紹介は時間がかかるので、とりあえずホームページ見てください」、「求人票見て、あとは自分で考えてください」という乱暴なサービスが提供されていることを目撃するはずです。
または、クライアントから、「オタクの会社は説明とかしないでよいので、どんどん応募者だけ集めてくれればいいよ、あとはこっちで口説くから」というコメントを耳にするかもしれません。

あなたの職業は「キャリアコンサルタント」です。キャリアコンサルタントは、キャンディデイトのキャリアゴールの設定を手伝い、ゴールに対して足りないスキルや経験を分析し、キャリアゴールを達成するためのキャリアパスについてアドバイスを行う、非常にレベルの高い仕事なのです。
そのためには、クライアント企業の一般情報・案件のジョブディスクリプションだけではなく、沿革、事業特性、市場環境、組織構成、求人ポジションの機能と他部署との関係、採用背景、期待される役割、キャリアパス、上司・部下のキャラクターなど様々な包括的な情報をクライアントからヒアリングし、キャンディデイトに提供した上で、人生の方向を指し示すことが求められます。

求人サイト情報や求人票+@程度の情報しか提供できない人材紹介会社は、想像以上の速度でITやSNSに置き換えられ、付加価値の低い紹介会社は消失していく運命にあります。
また厳しいことをいうようですが、人材紹介業のコンサルタントのキャリアはそんなに潰しの利くものでもありません。企業人事に転職しようと思っても、採用業務以外は全く経験していないので、スペック違いで書類落ちします。

だからこそ、まずは人材紹介業におけるプロフェッショナルを目指してほしいのです。

仕事に迷ったとき、楽な方に流されそうになったとき、思い出してください。
人材紹介業における主役は「人材」であるということを。

何だか、長々と説教垂れていますが、、、
とにかく、この春から人材ビジネスを始めた新入社員の皆さん、ようこそ人材ビジネスへ!
この仕事は非常に社会性、公共性が高く、そして皆さんを鍛えてくれるはずです。
少し時間はかかるのですが、大変面白い仕事ですので、すぐに諦めずに頑張ってください。

三上 俊輔

著者情報:
三上 俊輔

2006年、早稲田大学法学部(専攻労働法)を卒業後、独立系エグゼクティブサーチ会社であるサーチファーム・ジャパン株式会社に入社。柔硬幅広い業界の部門長クラス以上の経営者獲得、スペシャリスト(エンジニア、会計士など)採用を実現。 2011年、サーチファーム・ジャパンより組織戦略及び技術コンサルティング事業を分社化し、ジーニアス設立、代表取締役就任。 理論と実践のギャップを埋め、健全なる雇用環境の発展に微力ながら貢献すべく、スカウトその他様々なプロジェクトを戦略的に遂行している。

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