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最高経営者がクビになるとき

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富士通、オリンパスに続いて川崎重工業でもクーデターが起こりましたね。
しかも株主総会の直前ということで、IRや法務担当者がテンテコマイな忙しさになることは間違いないですね。
その後の報道については、読売社説「川重社長解任 合併で混乱招いた社内抗争劇」NHK「川崎重工 異例の社長解任 背景は」などでも分かりますが、三井造船との統合も白紙撤回されています。
識者の方々は、KHIにとっては2014年以降受注の期待のない造船事業が主体の三井造船と一緒になる意味ないだろう、そもそも三井造船本体よりも三井海洋開発とか優良関連会社を取り込みたかっただけなのでは(でもそれであれば丸ごと統合しなくてもいいだろう)などコメントしています。

そこで私が人材ビジネスをしている中で、実際に起こったクーデーター、経営トップがクビになる瞬間について考えてみたいと思います。

1.外資系企業のカントリーマネージャーの場合
外資系企業のカントリーマネージャー案件というのは、たまに当社でも取り扱います。
依頼パターンとしてはAPACや本社HQからトップを切り替えたいので隠密で動いてほしい、というケースが多いです。
クビになる理由としては・・・
①業績が悪い(予算未達、だいたい2期連続で未達だとクビです)、
②社内で不正が発覚(インターナルオーディットで明らかになるケースもあります)、
③人間関係が切れたのでリセット(APACやHQで人事異動があり、カントリーマネージャーを採用した本人がいなくなった)、
④日本法人の閉鎖(他のAPAC地域から日本をカバーすることが決定、社員を解雇して、会社を清算して、最後は自分をクビにします)
といったものです。
2年くらい前までは④日本法人の閉鎖が結構多くて、日本人としては少し寂しい思いをしました。
最近は日本進出もしくは再進出で現法組織作りをお手伝いするケースも多くなってきました。

2.ファンド出資会社の場合
PEファンドやVCがメジャーな株主の会社なども時々お取引をします。
こういった資本側から経営者として送り込まれる場合には、元々任期が2-3年のケースが多いです。クビになる理由としては・・・
①資本政策の変更(ファンドから事業会社にExitが行われファンドからの落下傘部隊が不要になった、創業者がファンドに売却⇒現経営陣交代)、
②業績が悪い(再生ファンドの場合は四半期ベースで評価を行い見込みがなければすぐに入れ替える)
③創業者退場(VCメジャーの場合、且つ経営説明義務が嫌になった創業者が途中で退場することがたまにある)
といったものです。
③創業者退場は資本出資するタイミングでは通知していないので、たまに乗っ取られてしまう哀れなファウンダーも目にします。
株主至上主義をビリビリ感じる話もあり、私も色々と暗部を聞きまくったのが理由で自己資本で会社を運営しています。

3.上場会社の場合
上場会社ではIR情報にも掲載しなくてはいけないので、「一身上の都合、健康上の理由」で片づけられてしまうケースが多いです。
ただ当社のようにエグゼクティブ案件を結構な数取り扱ったりしていると、現にクビになった経営者の方もご相談に来るわけで、またそういった方々は1社だけではなく複数社の経営経験もあったりするので本当に色々なお話を耳にします。
クビになる理由としては・・・
①オーナー・株主マター(特に強烈な個性のある創業者がオーナーに残っている場合、その人の好き嫌いで人事が行われたりします。時々「殿ご乱心のあおりを受けてクビになったでござる」という方もいらっしゃいます。)
②監査法人と刺し違える(監査法人が「意見付けられません」といったりした場合には社長やCFOが辞任と引き換えに新しい監査法人に「意見書いてもらう」ことがたまにあるようです)
③不正や不適切な関係が発覚(オリンパスや大王製紙、セイコーなど、女性関係や経費回りでにっちもさっちもいかなくなって辞任に追い込まれるというオイオイな話も・・・そろそろ男性問題で女性社長退任とかいうニュースも期待します、不謹慎ですいません。)
④親子上場の場合(あまりにも親会社意向を無視したり、出向者使えないから本社に戻したりするとクビになるようです)

http://www.ullet.com/acgraph/7012ac301_230x160_20120331.png今回のKHIは「三井造船との統合の是非」という極めて重要な経営戦略に関して、適切な手続きを経て、代表取締役が解職が行われた訳です。そういう点だと、これぞ株式会社制度の原点を見た感じです。

社外取締役も増えコーポレートガバナンス的にも改善が見られ、また解任決議まで通した本気の役員に率いられたKHIには僕は結構をしています。
まずはこの利益水準を次の1年でどのように変革するか、楽しみであります。

三上 俊輔

著者情報:
三上 俊輔

2006年、早稲田大学法学部(専攻労働法)を卒業後、独立系エグゼクティブサーチ会社であるサーチファーム・ジャパン株式会社に入社。柔硬幅広い業界の部門長クラス以上の経営者獲得、スペシャリスト(エンジニア、会計士など)採用を実現。 2011年、サーチファーム・ジャパンより組織戦略及び技術コンサルティング事業を分社化し、ジーニアス設立、代表取締役就任。 理論と実践のギャップを埋め、健全なる雇用環境の発展に微力ながら貢献すべく、スカウトその他様々なプロジェクトを戦略的に遂行している。

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