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大阪の民間人校長の退職に思うこと

給料最低・小規模校…民間人校長、謝罪なき退職

大阪市立小中学校で今年度から導入された校長の全国公募に応募し、4月に民間人校長として就任した市立南港緑小学校(住之江区)の千葉貴樹校長(38)が25日、「私が力を発揮できる場所とは違う」と述べ、同日付で退職した。

校長公募は昨年7月に成立した市立学校活性化条例に基づき実施。全国から1290人が応募し、民間企業などから11人、教頭など市教委内部から52人が合格したそうです。この民間企業11人から3ヶ月でおひとり退職になった、というのが今回の報道です。
また、採用過程で市教委側と意見交換する機会が少なかったことに不満を述べ、「若いからといって、各学年1学級しかない小規模校に配属され、給料も経歴に関係なく最低級。年功序列だ」と批判していることからも、配属や報酬評価制度について確認されなかったのかな?と感じています。
なお、この方は外資系証券(社名明かさないくらいなので、多分年齢から考えると3-5社)渡り歩き、お母さん(?)が起業した会社の役員に収まっていたようです。

本件については橋下さんは「子供の将来にかかわる教育の世界に身を投じる際は、覚悟を持ってほしい」と述べ、不快感を示しているようです。
まぁ、橋下さんが面接しているわけではないし、また11人採用して試用期間内に1人退職するというのは、それ程おかしなことではないので、任命責任を殊更追及する必要はないと思いますが、最近ネタ不足なのか、盛り上がっています。

当然のごとくネットでは、「口は巧いが使い物にならんタイプでは?」「子供の事考えろ。」「そもそも英語教育やグローバル人材の育成が出来るレベルまである学校ならば、すでに教育熱心な先生たちがいるだろうから、公募校長が来る必要はないと思う。」などなど、まぁ手厳しい意見が多い訳です。

ちなみに我々人材紹介会社は求人企業との契約では必ず「早期退職に伴う返戻事項」というものがあります。これは単純に言うと1ヶ月~6ヵ月以内に紹介した人材が退職した場合に手数料のいくらかを返戻するというものです。もちろん退職理由は自己都合になるので、会社が業績不振でリストラをした場合などは対象外です。
これは肌感覚なので何とも言えませんが、ポジションフリーで考えると20人に1人(5%)はこの試用期間内で退職しているように思います。学校長というのは一般企業でいえば、支店や営業所長のような立場になるのでこのクラスの採用で3ヶ月以内で早期退職というのは、コンサルや一部の金融を除いては余り聞きません。
ちなみに私もこれまでの人生で2度程この返戻を経験しています。お客さんを選んで100名以上の斡旋を支援しているので、まぁこんなもんだと思っていますが、同業の方のお話を聞くと10%超えているような会社もあるようです。もはやこのレベルになると試用期間終了後に売上確定した方がいいのではないか?というレベルです。

なお、大阪市教委は民間人校長をさらに増やすため、平成26年度に新たに着任させる市立小中高の校長69人のうち、約半数の35人を民間からの採用枠として設定しているようです。
能力もやる気もイマイチな方に長々残られても学校は困るでしょう、また教育現場でずっと仕事をしてきた訳ではない方々にロイヤリティ持って最後まで頑張れというのも難しいでしょう。そのため一定の割合で早期退職がでるのは致し方ないことと思いますが、最初の数年間は政策の成功如何の評価に関わりますので、こういった事例を教訓に次の採用に活かしてもらいたいと考えています。
そうじゃないと、校長公募が「糊口を凌ぐための浪人の仕官先」になっちゃいますからね!

三上 俊輔

著者情報:
三上 俊輔

2006年、早稲田大学法学部(専攻労働法)を卒業後、独立系エグゼクティブサーチ会社であるサーチファーム・ジャパン株式会社に入社。柔硬幅広い業界の部門長クラス以上の経営者獲得、スペシャリスト(エンジニア、会計士など)採用を実現。 2011年、サーチファーム・ジャパンより組織戦略及び技術コンサルティング事業を分社化し、ジーニアス設立、代表取締役就任。 理論と実践のギャップを埋め、健全なる雇用環境の発展に微力ながら貢献すべく、スカウトその他様々なプロジェクトを戦略的に遂行している。

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