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ユニクロの世界統一賃金について思うこと

皆さんご存知の通りファーストリテイリングが世界統一賃金を導入するそうです。

海外強化へ人材確保狙う ファストリ 世界統一賃金 調整複雑、導入時期は未定
カジュアル衣料大手ユニクロを展開するファーストリテイリングは23日、店長候補とした正社員の給与や役員の報酬の体系を一本化する方針を明らかにした。部長級約60人について今年中にも先行適用し、実質的に国内外で同一となる給与制度の導入を目指す。海外事業拡大に向け、高い賃金水準によって優秀な人材を確保する狙い…

細かい制度内容までは確認していないので適当なことは言ってはいけないのですが、これから人事部及び支援しているであろうコンサル会社は毎年頭を抱える課題が出てきそうです。
まず世界各国間の為替や税制、社会保険は非常に変動要素が大きく、そこに物価水準と給与水準を踏まえて、上級管理職の給与を設定しなくてはいけません。
これまでも世界統一賃金という発想は多くの大手企業で検討されてきた歴史はあるのですが、そもそも海外赴任者の給与だけでも設定が非常に大変で、世界統一賃金まで踏み込んだ会社はありません。
そしてすべての会社が現地法人を設立し、現法の人事制度を個別に設けて運用を行っているのが現状です。
だからこそ、このファーストリテイリングの試みは大変興味深いものなのです。

私見ですが、色々と制度を揉んで結果的に以下のように帰結するのではないかと考えています。
・上級幹部職員は全て本社採用に切り替え、世界中どこでも勤務可能とする。住居費用と子女学費は会社持ちになる。
・幹部の給料は日本人は現状維持、アジア諸国は軒並み上振れ、シンガポール人やアメリカ人は下振れする可能性が高い。
・地域別のホールディングカンパニーを作り、その地域に必要なスタッフはその地域の統一賃金を適用する。
・アルバイトについては各国というより店舗別で給料決めるので、凄く多くの労働者層は実は今と変わらない。
なんだ、結局GHQとRHQを軸とした欧米企業のストラクチャーと同じじゃないか!と言われればそれまでなんですが、多分落ち着くところに落ち着くような気がします。

ちなみに一部のアングラメディアで、「日本人の給料が中国人と同じになる!ユニクロ超ブラック!」や「ハイパーインフレ来たら終了、ドボン」などのコメントを見ます。
この点については、日本本社の給料水準をグローバルの標準にしているのでこの先5年くらいは特に日本のスタッフの取扱いは変わらない、ハイパーインフレが起こったらユニクロだろうとどこの企業に在籍していてもドボンなので、どうしてこう考えちゃったかな?と感じています。

ユニクロのこの取り組みは非常に興味深いので、手続き的には非常に大変だと思いますが、完遂して運用フェーズまで持って行ってほしいですね。

三上 俊輔

著者情報:
三上 俊輔

2006年、早稲田大学法学部(専攻労働法)を卒業後、独立系エグゼクティブサーチ会社であるサーチファーム・ジャパン株式会社に入社。柔硬幅広い業界の部門長クラス以上の経営者獲得、スペシャリスト(エンジニア、会計士など)採用を実現。 2011年、サーチファーム・ジャパンより組織戦略及び技術コンサルティング事業を分社化し、ジーニアス設立、代表取締役就任。 理論と実践のギャップを埋め、健全なる雇用環境の発展に微力ながら貢献すべく、スカウトその他様々なプロジェクトを戦略的に遂行している。

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