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新日本監査法人、幹部社員の退職勧奨制度を導入

新日本監査法人は幹部社員であるパートナーの退職勧奨制度を導入する。監査品質が基準に満たない状況が続く場合、退職を促すように人事制度を変更する。新日本は東芝の不正会計を見抜けずに昨年末、金融庁から行政処分を受けた。新制度の導入で業務に緊張感を持たせ、監査品質の向上につなげたい考えだ。
新日本は約630人のパートナーを抱える。パートナーは監査法人の共同出資者であり、退職には全員の合意が必要であるなどハードルが高い。これまで新日本では退職を勧奨する仕組みがなかった。

監査品質の優劣に応じてパートナーを5階層で評価する制度を6月に導入した。下位の2階層に入ってしまうと、業務改善に向けた計画を策定しなければならない。足元で改善が必要なパートナーは全体の2割近くにのぼる。1年で改善できない場合、退職を促す制度を新たに加える。(日本経済新聞 9月16日)

東芝の不正会計問題に関して、東芝の個人株主が新日本監査法人に対して、東芝に約105億円を賠償するよう株主代表訴訟を起こした。いよいよ監査法人もターゲットになって、監査品質が厳しく問われるようになった。
監査法人では公認会計士への信賞必罰が必至となったが、この記事にあるように退職勧奨制度を導入しても、大規模な不正会計を見抜けなかったという事態に直面しない限り、パートナーへの退職勧奨は難儀だろう。
退職勧奨を受けて退職すれば公認会計士としてバッテンを付けられたのも同然で、そんな公認会計士が承認した監査証明は信憑性に疑問をもたれてしまう。そもそもクライアントがつくだろうか。退職勧奨は公認会計士としての職業的生命を抹殺し、生活の糧を奪ってしまうようなものだ。
だが、そのぐらい厳しい覚悟で臨まない限り、信頼性を取り戻せないのが監査法人の現状だ。不適正意見を乱発したらクライアントを失いかねないから、そこまでの暴走はないだろうが、不適正意見の件数を増やすことが専門職としての存在証明と受け止める公認会計士も現われるのではないか。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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