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賃上げした中小企業の法人税減税を2倍へ

経済産業省は2017年度の税制改正で、賃上げした企業への法人税減税を中小企業に限って2倍にすることを求める。現在は企業規模にかかわらず賃上げ額の10%に相当する法人税が差し引かれるが、中小は減税率を20%に高める考えだ。賃上げが中小に波及しやすい環境を整える。
(日本経済新聞 8月25日)

賃上げの政策誘導はどこまで効果が出るのだろうか。経済効果にプラスを求めて諸々の政策が打たれることは、それ自体は好ましいが、政策が積み重なると統制経済の匂いがしなくもない。

いまや中小企業には、いびつな給与バランスになってでも賃上げせざるをえないという切迫した事情がある。年商40億円の外食企業の例だが、新規出店にともなって人員を確保するさいに、売り手市場であるがゆえに応募者の要求に従って、素人同然の人材に対しても分不相応な給与を提示して支払っているのだという。

すると、何が起きるのか。十分なキャリアを積んでいる既存の社員よりも、給与が高くなっているのだ。既存の社員は「なんで俺らよりも素人の給与のほうがが高いのか!」と不満を暴発させ、次々に辞めてゆく。かといって、新規出店の手控えは成長の放棄にもなりかねず、経営者の視野に入っていない。

賃上げは社内バランスを配慮しないと、組織の崩壊にもつながりかねない。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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