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コマツのダントツ経営、パナソニックは5000名削減

コマツ坂根正弘氏昨日は時事通信主催の講演会、講師はコマツの坂根正弘さん、お題は「ダントツ経営」
これまでコマツのv字回復や全商品へのGPS搭載、無人ダンプトラック運行システムについては様々な立場の関係者から話を聞いたことがありましたが、経営トップの考えを聞くのは初めてだったので、大変興味深かったです。

坂根さんが社長就任時、コマツは赤字転落、子会社が300社あり、本業とは関係ない多くの事業会社を持つ、大変固定費の高い、贅沢なコングロマリット企業でした。
彼の最初の仕事は、大きな構造改革。2万人いた社員の内1100人を削減し、300社あった子会社を110社削減、市場NO1またはNO2以外の製品からの撤退、販売が国内のみの製品・事業群の売却を行っています。
日本企業における「雇用」は絶対不可侵領域に近い意味を持つことや、市場NO2以下であっても売上の期待できる事業・製品から撤退、売却することは一時的な売上ダウンにも直結することを踏まえると、これは大変に勇気のいる、またトップダウンでしか意思決定できない類の勝負だったと感じました。

以前のジャック・ウェルチの講演で聞いた「選択と集中、NO1戦略」に非常に近い、大胆な意思決定を行ったコマツという日本初のグローバルカンパニーには学ぶものが大変多く、今度ゆっくり過去10年分くらいの決算資料を見てみようと思いました。

スマホ対応さて、その一方で大変な迷走を続ける総合電機、今日もパナソニックが「3年で5000人削減」という報道がありました。
詳しくは以下のような5つのテーマに取り組むようです。

1.自動車・産業用機器:従業員を約5000人削減
据え付け型のカーナビは国内シェア20%、グローバルでもトップクラスのシェアがあります。ハイブリッド自動車用電池も三洋を吸収し世界トップレベルにとどまっています。ここはまだ勝負ができるフィールドと踏んでいると思いますが、アッセンブリ―・工場は集積を図るようです。万年赤字の半導体事業は富士通とのJVを維持するものの、最終的には売却を視野にいれているのではないでしょうか?
2.住宅設備・照明関連:中国やインドで拡大
旧パナ電工部隊、いずれも国内では全国津々浦々の販売店・サービスネットワークを持っており、国内は盤石なビジネスです。海外でも日本と同じような代理店展開と高品質なサービスを提供できるのか?人材の育成がカギを握りそうです。
3.液晶パネル:テレビ以外での活用を拡大
まずはプラズマからの撤退を3月に発表、テレビ市場全体の10%程度の製品に新規投資を行わないのは賢明な判断だと思います。ただこの意思決定は遅すぎますね。既に規格で勝負がついた市場でいつまでも勝てない勝負を続けていたのはサッパリ訳が分かりません。またテレビ用パネルは韓国勢からの調達に切り替え、液晶テレビの開発部隊は中小型タブレットに特化するようです。
4.デジタルカメラ:ミラーレス一眼など高付加価値モデルに集中
昨年度のグローバルシェアは、①キャノン18.8(0.3) ②ソニ-17.1(-0.4) ③ニコン15.2(2.9) ④サムスン(韓)9.6(-1.2) ⑤富士フイルム8.6(1.2)ということで、パナソニックは5位にも入っていません。ミラーレスは国内2位ということで、携帯電話のカメラ機能にどんどん浸食されるコンパクトデジカメからは手を引き、このニッチ市場のみで勝負するようです。
5.白物家電:海外売上高比率を2012年度の55%から60%に引き上げ
もうアジアの主力電機量販店ではパナソニックは中心から周辺に除けられています。個人的には乾燥機付きのドラム式洗濯機は良い商品だなーと感じています。
ただスマホ対応炊飯器とか絶望的な製品を恥ずかしくもなく上市してしまっています。「業界で初めてスマートフォンを炊飯器本体にかざすと、パナソニックのクラウドサーバーにつないで、簡単にレシピ検索・炊飯設定・マイレシピ登録がなどができるようになりました。」?????
この商品を2か月前にビックカメラで見かけたときに目ん玉がぶっ飛びそうになりました。炊飯器にいちいちスマホ使うかよ。開発者は家のオカンにこの商品使うかどうか聞いてみなかったのでしょうか。それともスマホ分かっていない役員が、とりあえず炊飯器とスマホ連動させてみて、という指示でも出してしまったのでしょうか?

いずれにしても今後もパナソニックの大リストラは続きます。まずは何を犠牲にするのか?強みを磨く経営を貫いた坂根さんのような救世主がパナソニックには必要だなーと感じた一日でした。

三上 俊輔

著者情報:
三上 俊輔

2006年、早稲田大学法学部(専攻労働法)を卒業後、独立系エグゼクティブサーチ会社であるサーチファーム・ジャパン株式会社に入社。柔硬幅広い業界の部門長クラス以上の経営者獲得、スペシャリスト(エンジニア、会計士など)採用を実現。 2011年、サーチファーム・ジャパンより組織戦略及び技術コンサルティング事業を分社化し、ジーニアス設立、代表取締役就任。 理論と実践のギャップを埋め、健全なる雇用環境の発展に微力ながら貢献すべく、スカウトその他様々なプロジェクトを戦略的に遂行している。

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