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「平均勤続年数が長い企業」200社ランキング

居心地のよい会社ならば、多少の不満があっても社員はなかなか辞めない。その居心地の良さを表す指標が平均勤続年数だ。同業種の中で比較をして、他社よりも平均勤続年数が長ければ、いわゆるブラック企業ではない可能性が高い。
企業の採用HPやパンフレットに「暖かい社風」「家族的な経営」などと書かれていることがよくあるが、こんな抽象的な表現では何も言っていないのと同じだ。居心地の良い企業を探したいのならば平均勤続年数をチェックしよう。

東洋経済では平均勤続年数の長い企業を有価証券報告書をもとに独自に集計し、トップ200社をランキングとしてまとめた。ただし社員数100名未満の企業は除外してある。
第1位は平均勤続年数25年の富士石油。平均年収は800万円と高水準だ。同社は精製した石油製品を昭和シェル、JX日鉱日石エネルギー等に供給している。千葉県にある袖ヶ浦製油所のコスト競争力が高いのが強みだ。原油販売価格低下による石油精製マージン縮小や在庫評価損で前期は赤字だったが、今期はコスト削減が奏功して黒字化の見込み。

第2位は群馬や埼玉を地盤とする中堅建設会社の佐田建設。平均年収は539万円と上場建設会社の平均と比べて低い水準だが勤続年数は長い。居心地の良い会社であることが想像できる。
一時期、ゴルフ場開発などに失敗し業績が悪化したが、2004年4月からの3カ年計画で不動産事業を分離して建設に集中することにした。その結果、経営再建を果たしたのだが、これまで採用を抑制してきたため人員が不足していて仕事量の増加に対応できない。また、平均年齢が46.7歳と高いこともあり、新卒・中途での社員採用に前向きだ。

3位はピアノ販売で世界2位の河合楽器製作所。平均年収は555万円と高くないが、勤続年数は24年1カ月年と長い。本社のある浜松市には業界トップのヤマハも本社を構える。
ヤマハは平均年収が823万円と河合楽器よりも圧倒的に高いが、平均勤続年数は20年3カ月と河合楽器を下回る。企業規模、事業構成などに大きな違いがあるため単純比較はできないが、河合楽器は居心地がいいのかもしれない。

4位は平均勤続年数23年9カ月で神戸電鉄。阪神系の電鉄会社で神戸北部に路線を持つ。沿線の不動産開発や食品スーパーなども展開し、売り上げ規模は大きくないが経営は安定している。平均年収は499万円と500万円割れだが、平均勤続年数は23年9カ月と長い。
(東洋経済オンライン 11月3日)

平均勤続年数が長い企業は、若くして辞める人が少ない会社であり、確かに、いわゆるブラック企業ではないかもしれない。ただ、辞める人が少ないとともに、新しく入社する若い人も少ない企業でもある。

一般に、成長企業では新人採用を拡大していくため平均勤続年数は短くなりがちだ。一方、成熟して安定している企業の平均勤続年数は長くなる。同業の河合楽器とヤマハの差は、その辺にあるのかもしれない。

また、業種、業界の中での労働流動性も平均勤続年数に影響を与える。たとえば、航空機のパイロットが多くの航空会社を渡り歩くことはよくあることだが、鉄道会社の従業員が他の鉄道会社へ転職することは比較的少ない。

平均勤続年数の長い企業は、人材を大事にしていることを誇りにしてよいが、同時に、その人材を活かした新たな成長を模索してもよいだろう。

谷萩 祐之

著者情報:
谷萩 祐之

1958年生まれ、早稲田大学理工学部数学科卒。富士通株式会社でソフトウェア事業、マルチメディア事業、グローバル事業、コンサルティング事業を担当した後、現在、谷萩ビジネスコンサルティング代表。経営コンサルティングの傍ら、雑誌等で執筆活動を続ける。著書:「Webが変わる プッシュ型インターネット技術入門 」

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