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RAN約款変更の背景についての一考察

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リクルートRANサービスユーザーにとっては記憶に新しいと思うが、先日RANサービスの約款が変更された。
従来は「1求職者に対して、30日以内のスカウトメール打診は3通まで」というルールだったが、「1通まで」に変更となった。
私はこの政策変更は、バンク型の人材紹介会社の収益に大きなインパクトがあるのではないかと考えている。

バンク型の人材紹介会社の人材決定リソースの内、多いところでは70%くらいがRAN依存、少ないところでも25%程度がRANエントリー者ではないかと感じている。
当社のようなリテイナーファームでも、最近はハイブリッド型(リテイナーとコンチの)が増えている。案件の性質によって契約形態を通常のリテイナー、コンチを組み合わせている(20%くらいがコンチ)が、コンチ案件は一般の人材紹介と同様のサービスプロセスとなるので、社内外のDBマッチングとなる。DBの母集団数、充実度についてはRANが圧倒的であり、最初に見る社外DBはRANというコンサルタントが多いと思う。

転職サイトを用いたマッチングについては、以前はスカウトメール1通当たりの手数料を支払っていたために、やたら滅多ら乱打することはできなかった。
限られたスカウトメールを如何に有効に使うのか、要するに(求職者の方には良い表現とは言えないが)上手に釣る技術を身に着けることが、バンク型人材紹介エージェントの基本動作だった。
しかしながら、成功課金型モデル上市後は様相が一変し、スカウトメールの乱打が可能となった。スカウトメールは品質ではなく、とにかく数を打つことが多くの紹介会社の指標と変化した。
エントリー率については従来は目指せ10%、概ね5%程度くらいだったと思うが、現在は高くて3%、1%以下が大半となっていると思う。

これは求職者サイドから捉えると大変なサービスの悪化につながることが予想される。ゴミのようなジャンクメールが楽天DMの如く大量に送られてくるのだ。しかも案件IDさえ変更すれば(コピーして新しい案件として登録する)、同じ案件もいくらでも打診可能なために、「おい、またか!」というケースも増えたのではないかと考える。当然サービス全体のエントリー率は低下するために、効率の良い転職支援サービスからはかけ離れていく。

更には煩雑となった打診作業を外注する事業者が登場した。これは紹介事業者のIDとPWを外注業者に貸与し、代わりに特定の検索式に該当した求職者に一律スカウトメールを送るといった類のサービスだ。国内だけではなく、海外の事業者も参入している。もはやスペックさえ見ないで打診するので、こうなると品質とかそういう議論の俎上にも上がってこない。

私はこういったサービス、即ち外部に個人情報満載のDBのIDとPWを貸し出す行為がセットとなるサービスというのは、そもそもRANの約款的にはNGなのではないかと考えている。所謂自社の専業従業員とは言えない、業務委託のコンサルタントでさえグレーゾーンであるのだから当然だろう。
運営(リクルート)も、さすがにIPアドレスまでは管理できないので、致し方ないと思うのだが、個人情報の流出リスクの高い周辺サービスには注意喚起した方が良いのではないか?と感じている。紹介会社が勝手にベンダーにスカウトメール打診を外注する=その先に情報が洩れるリスクが高くなる、そんなことは人材ビジネスを営む者は当然理解していると思うからだ。

いずれにしても、乱打戦によって玉石混交となってしまったマッチングワールドに秩序と品質が取り戻されることは当該施策で実現できるのか?は興味高いテーマです。年末まで皆さま頑張りましょう。

三上 俊輔

著者情報:
三上 俊輔

2006年、早稲田大学法学部(専攻労働法)を卒業後、独立系エグゼクティブサーチ会社であるサーチファーム・ジャパン株式会社に入社。柔硬幅広い業界の部門長クラス以上の経営者獲得、スペシャリスト(エンジニア、会計士など)採用を実現。 2011年、サーチファーム・ジャパンより組織戦略及び技術コンサルティング事業を分社化し、ジーニアス設立、代表取締役就任。 理論と実践のギャップを埋め、健全なる雇用環境の発展に微力ながら貢献すべく、スカウトその他様々なプロジェクトを戦略的に遂行している。

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