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大半の企業、人件費の拡大懸念 同一労働同一賃金の導入に警戒感

政府は20日、非正規労働者の待遇を改善する「同一労働同一賃金」の実現に向け指針案を示して取り組みを強化する方針を表明したが、産業界では導入への警戒感を強めている。「制度が決まれば対応しなくてはならないが、コスト的には厳しい」(大手スーパー)と、人件費の拡大を懸念する声が圧倒的に多い状況だ。人手不足のなか人材流出の懸念もあり、産業界は対応に苦慮している。
 
2008年に導入したりそなホールディングスは、正社員、限定正社員、パートナー社員について同一の職務であれば、基本給を同額とした。正社員には全国各地への転勤がある分、賞与や退職金などで差を設け、組織のバランスを図っている。(中略)。

多くの企業では「運用がどうあるべきなのか不明」(IT大手幹部)、「同じ仕事でも正社員とアルバイトでは責任が違う。どこまでの差が許されるのか」(大手外食幹部)などと、導入に対する不安の方が大きい。
(SankeiBiz 12月21日)

厚生労働省によると、非正規雇用は全就労者の4割を超えている。この層が貧困層として定着してしまったら、景気回復どころではない。安倍政権がデフレ脱却に向け物価上昇率2%を掲げているが、非正規雇用者の賃金水準が現状のまま目標どおり2%上昇したら、ますます生活苦に拍車がかかる。

国民年金の未納者も増え、社会保障財源に影を落とし、税と社会保障の一体改革は絵空事にもなりかねない。
やがて非正規雇用者の不満は政治に向けられ、政権支持率が下がり、投票行動にも大きく影響してくる。そのぐらいのことは自民党も承知ずみのはずで、同一労働・同一賃金は政権維持に必須の政策と考えているのだろう。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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