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がんばり過ぎた“パワハラ女帝”の末路

「パワハラ」は、自分を追いつめてがんばる人ほど無意識のうちにしてしまいがちです。実際、そうした状況に陥った会社の事例と解決策を特定社会保険労務士の井寄奈美さんが解説します。
ある女性向け商品の企画会社に、社歴18年で企画部チーフデザイナーのAさんという女性がいました。彼女は「女帝」と呼ばれていました。
(中略)

Aさんの厳しい指導ぶりから、退職する部下が続出しました。Aさんは「教える時間が無駄」と考えていることを部長に伝えたため、肩書は変えずに部下なしで処遇されるようになりました。
(中略)

Aさんの送別会の幹事を誰がやるのか、手を挙げる人がいないまま時間だけが過ぎていきました。転職活動をしていたAさんは、自分だけでなく周囲の社員にも取らせなかった有給休暇を積極的に取るようになり、結局、退職するまで送別会が開かれることはありませんでした。20年近く勤めた会社を去るとき、誰にも見送ってもらえなかったのです。
(毎日新聞 9月18日)

この記事で取り上げられたAさんは、創業経営者がパワハラを犯すパターンに似ていなくもない。自分への厳しさを部下にも当然のように要求し、育成という視点が欠落しているために人望を失い、やがて誰からも相手にされなくなってしまうのだ。

このタイプの社員に、部下とのコミュニケーションを求めることは現実的でない。当人の努力次第で関係を改善できるかもしれないが、適材適所の理からずれば、出来高払いの専門職に就けて一匹狼として活躍させたほうがよい。会社にも当人にも、そのほうが得策だ。

それにしれも“ドン”とか“女帝”と呼ばれる存在は厄介である。そういう人物は対人関係に強く、社会的な生命力にあふれているために易々と失墜しない。最後は実力者ゆえの暴走が命取りになって失脚する場合が多いが、それまでの時間がなんとも不毛である。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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