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ブラック企業との訴訟支援の基金設立

居酒屋チェーンを経営するワタミのグループ会社で働き、過労自殺した森菜美さん(当時26)の両親が「ブラック企業と戦う望(のぞみ)基金」を設立した。
会社側に損害賠償を求めた訴訟は昨年12月、約1億3千万円の支払いと謝罪で和解し、賠償金の一部を基金とした。過酷な働き方を強いられている人などが会社と訴訟する際の費用などを負担する。

父親の豪さん(67)は「(厳しい労働条件で働く人に)君がおかしいのではなく、会社がおかしいということもある。死に至る前に基金を利用し、声を上げてほしい」と呼び掛け、母親の祐子さん(62)も「健康に働けて正当な賃金が支払われる当たり前の社会になってほしい」と訴えた。
(中略)
基金は50万円を上限に無理しで貸与し、裁判で敗訴した場合には返済を免除することもある。両親を支援した「全国一般東京東部労働組合」が申請を受け、貸し出しを判断する。
(日本経済新聞 8月27日)

ブラック企業の経営幹部や社員と話すと、しばしば不健全自慢を口にする。
たとえば、連日のように誰かしら社員が徹夜して、明け方まで煌々と電気がついている様を「不夜城」と称する発言はずいぶん耳にした。
不健全自慢の根っこにあるのは、忙しさ自慢でもある。

やがて心身が疲弊して社員が追い詰められる結果も招くのだが、法的問題が発生しないと、なかなかブラック体質は改まらない。病を得て健康管理に目覚めるのと同じだ。
しかも、被害社員の多くは。人事上の不利益や訴訟費用を懸念して我慢を強いられている。この記事で紹介された基金の設立は、ブラック事案のあぶり出しに役立つに違いない。
ブラック体質を良きこととする感覚は、そう簡単に改まるものではない。改善に臨もうとしても、身についた感覚が足を引っ張ってしまうのだ。
法的効力をもった強制力の介入が必須である。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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